
~ハンドボール文化を日本にも。プレーヤーとしての挑戦は試合だけじゃない~
「一選手」の枠にとらわれず、全て挑戦していきたい
金丸:土井さんはTikTokで動画の配信もしていますよね。めちゃくちゃ面白いし、芸達者だなと感心しています。あれも、チャレンジの一環ですか?
土井:ある意味、チャレンジですね。フォロワーがもうすぐ240万人になります。ちょうどパリの人口を超えました(笑)。
金丸:何がきっかけで始めたのですか?
土井:友達から「レミイだったら絶対面白い動画になるからやってよ」とすすめられて。
金丸:ということは、あれが素の土井さんなんですね。
土井:はい、もともとあんな感じです(笑)。ジム・キャリーやチャーリー・チャップリン、日本だと志村けんさんの笑いって、言葉に頼らないから国境線がないじゃないですか。それがいいなと思って、すごく影響を受けています。
金丸:当然ハンドボールを知らない人からもフォローされていますよね。
土井:そこがポイントですね。もともと身内向けにやっていたんですが、ある日、動画がバズって、一晩で3,000人くらいフォロワーが増えたんです。そのとき、TikTokってすごいなと可能性に気づきました。
金丸:自分のファンになってもらえれば、そこからハンドボールにつなげることができますからね。
土井:そうです。最初は関係ない動画でも「実は僕、ハンドボールやってます」と見せられるんじゃないか、と思って。
金丸:協会のような公的な機関だと、SNSを使っても関係者くらいしか見ていないことがよくあります。それとは全然違う切り口で攻めるというのは、いい方法だと思いますよ。
土井:フランスはファンサービスがすごくて、チームや選手たちがあの手この手でファンを喜ばそうとするんですね。たとえば試合が終わったあと、選手たちと100人くらいのファンやスポンサーが参加する立食パーティーが、定期的に開かれていますし。
金丸:すごく羨ましいですね。日本ではほかのスポーツも含めて、その日のプレーについて選手と直接会話できる機会なんてありませんから。
土井:あるいは試合が終わった直後に、選手ふたりくらいがユニフォーム姿のまま現れて、ポストカードにサインを書いてくれる。次の試合ではまた別の選手がサインをするから、ファンはまた来たいと思うようになるんです。ヨーロッパでも、なぜかハンドボールだけ、選手とファンの距離感がものすごく近い。今の日本の状況を見ていると、まずはハンドボールに興味を持ってもらうため、そしてファンをさらに楽しませるためにできることは、いくらでもあると感じています。
金丸:同感です。チームとして、選手として、あるいはリーグ機構として、それぞれの立場で、いろいろなチャレンジができるはずです。
土井:今は僕のTikTokが目立っているけど、みんなが同じように動画配信をしなきゃいけないということではなくて、自分にできる範囲で情報発信をしてくれれば、それだけ新しい人にリーチできる可能性も高まるんじゃないかと思っています。
金丸:われわれフューチャーのITやデジタルの力も、マーケティングを始め、いろいろなところで活用したいですね。
土井:僕は母体がIT企業だという点でも、ジークスターに魅力を感じました。デジタルの力をプレーにも運営にも生かせるだろうということがひとつ。もうひとつは、アスリートの第二の人生を考えたときに、ITの力を身につけておくことが武器になるのではないかと。
金丸:それはすごく重要な視点です。指導者や監督として関わり続けられる人は限られているし、なかには飲食店経営に手を出して失敗する人もいます。厳しい練習に耐えるガッツを持っている元アスリートは、競技を離れてもいろいろな分野で優れた能力を発揮できると思うんです。
土井:僕はひとりの選手として技術を磨き、チームの勝利に貢献したい。でもそれだけじゃなくて、みんなでいろいろなことにチャレンジしながらもっとファンを増やしていきたいし、アスリートのセカンドキャリアをよりよいものにしていきたい。やらなきゃいけないことが、いっぱいですよ(笑)。
金丸:ものすごく欲張りだけど、土井さんの突破力があれば、決して不可能ではありません。これから一緒に「ジークスター東京」を、そして日本のハンドボール界を盛り上げていきましょう。今日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。