ドクターKの憂鬱 Vol.8

「男できた?」久しぶりに妻と会い、驚く男。変わり果てた女の態度に思わず…

”ドクターK”と呼ばれる男は、ある失恋をきっかけに、憂鬱な日々を過ごしていた。

彼はかつて、医者という社会的地位も良い家柄も、すべてを忘れて恋に溺れた。

恵まれた男を未だに憂鬱にさせる、叶わなかった恋とは一体―?

◆これまでのあらすじ

友人の明石とともに愛子の店に出向いた影山。だが、彼女はいなかった。店の女の子に、ママには援助してくれる上顧客が何人もいると聞かされ、ショックを受ける。

▶︎前回:「金のためならなんでもするのか?」エリート男が夢中になった、女の裏の顔


愛子の苦悩


影山と湘南にドライブへ行った翌週の水曜日。

私は出勤のため、身支度を整えながら彼のことを考えていた。

「今までこんなに必死に口説いたことはない。ほんとうに」

湘南で影山から伝えられた言葉は、私が長い間忘れていた感情を思い出させてくれた。

彼の目からは、嘘偽りない誠意を感じとることができる。私は年甲斐もなく、このまま時が止まってしまえばいいのに、などと思ってしまった。

こんなに胸が、ぎゅっと締め付けられるような感覚に陥ったのは、一体いつぶりだろう。

今の夫と結婚したのは17年前。

15歳上の夫は私のワガママにも寛容で、子煩悩。私が夜の仕事をしている間は子どもの面倒をよく見てくれた。

山あり谷ありではあったけれど、結婚生活の大半はうまくやってきたはずだ。

しかし、一人息子が九州の全寮制の中学校に入学した頃から、少しずつ歯車がズレていったような気がする。

不動産業といっても、いくつかの事務所用ビルやマンションを所有しているだけで、毎日仕事らしい仕事があるわけではない。

側から見ていても、息子が寮生活を始めて以降、夫は時間を持て余しているようだった。

だが、ある時、興味本位でデイトレードを始め、あっという間にのめり込んでいった。

西麻布にデイトレード専用の部屋を作り、熱中するあまり私が夜中に帰宅した時に、夫は不在ということもあったほどだ。

「夢中になってて気がついたら朝だった」という夫の言葉に何も疑いを持たなかった。

しかし、昨年の秋ごろ。

夫が若い女性と連れ立って街を歩いていたことを、言いにくそうに伝えてきた人物がいた。

それが先日、湘南で偶然出会った聖菜だ。

「実際に私が見たわけじゃないんですけど…。店の女の子たちが噂していましたよ」

私は内心動揺していたが、それを表には出さないよう注意を払って言った。

「あら、そうなの?息子もいないし、私も家を留守にしがち。そのくらいの遊びも時には仕方がないわよ」

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