ヤドカリ女子 Vol.5

「頑張って片付ければいいのに」後輩男子の正論に、28歳女が返した意外な言葉

PR会社で多忙を極める28歳の綿谷あんな。掃除ができず、散らかった部屋に帰りたくないので、求愛してくるいろんな男のもとを毎晩泊まり歩く。

母親の“呪い”に、乱れた生活。そして歪んだ自尊心…。

これは、そんな女が立ち直っていくストーリーだ。

◆これまでのあらすじ

あんなはある日、道端でパニックになり泣いていたところを偶然入社2年目の後輩・祥吾に助けられ、彼の家に泊まった。

「あんなが祥吾に肩を抱かれてタクシーに乗ったところを目撃した」と女子トイレで指摘され…。

▶前回:「産まなきゃよかった」完璧を演じる女の破綻した生活に、影響を与えた過去とは


迂闊だった。突然泣き崩れてしまったあんなが祥吾に助けられたタクシー乗り場は、会社から一番近い。25時過ぎで、ちょうどタクシー帰りの人がピークの時間帯だった。

「もしかして付き合ってるんですか?祥吾くんと」

まだ入社2年目であどけなさを残す後輩女子の梨花は、唇で弧を描いていても目が笑っていない。オフィスのトイレで窮地に追いやられる日が来るなんて、思ってもみなかった。

「…やだな。誤解だよ」

ハンドクリームを塗り直しながら、あんなはようやく言葉を返した。

「私、あのとき急に気分が悪くなって立てなくなっちゃったの。その場にしゃがみ込んで立てなくなっちゃったのも見てた?」

嘘ではない。その場面は知らなかったのか、梨花は僅かに眉を寄せた。

「いえ…」
「じゃあ勘違いさせちゃうよね。貧血だったのかなー、タクシーが来てるのに立てなくなっちゃって。たまたま浅霧くんが居合わせたから、助けてくれたの」

ぺらぺらぺら。我ながらよく回る口だ。真顔で聞いていた梨花は、あんなの答えを聞くと、にこっと口角を上げた。

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