ヤドカリ女子 Vol.4

「産まなきゃよかった」完璧を演じる女の破綻した生活に、影響を与えた過去とは

PR会社で多忙を極める28歳の綿谷あんな。掃除ができず、部屋に帰りたくないので、求愛してくるいろんな男のもとを毎晩泊まり歩く。

母親の“呪い”に、乱れた生活。そして歪んだ自尊心…。

これは、そんな女が立ち直っていくストーリーだ。

◆これまでのあらすじ

あんなはある日、偶然入社2年目の後輩・祥吾に助けられ彼の家に行くことに。気が緩み「掃除ができない」と打ち明けると「手伝いましょうか」と言われ…。

▶前回:「家に帰りたくなくて、男の家を転々と…」真実を打ち明けた女が見た、後輩男子の意外な反応


整頓された祥吾の部屋のソファに腰掛けたまま、あんなは身じろいだ。

「別に僕も掃除のスペシャリストとかじゃないですけど、片付けくらいなら手伝えますし」

あっけらかんともう一度言う祥吾に、唇を噛む。

みじめだった。

「…いや、大丈夫です」

敬語になってしまったが仕方ない。

あんなはこれまで、擦り寄ってくる男性をこき下ろし、自立した女性を演じてきた。

男に弱点を見せたうえ、気を遣われるなど初めてだったのだ。

「別に遠慮しなくても」と言いかける彼に、あんなは「本当にいいから、大丈夫だから」と押し切った。

祥吾は「そうですか」とさして気にする様子もなく、食べ終えた食器をもって立ち上がった。

「そろそろ寝ましょうか。綿谷さん、シャワー浴びます?」
「あ、うん…ありがとう」
「じゃあタオル、これ使ってください」

差し出されたのは、白い今治タオル。あんなは受け取り、風呂場へ行った。

常に持ち歩いているメイクセットからクレンジングを取り出し、頬に塗りながらふと思った。

祥吾の部屋は8畳くらい。シングルベッド、小さなソファ、ローテーブル、テレビ。それぞれがうまく配置されて広々として見えたが…。

「…どう考えてもあのベッドで一緒に寝るしかないよね…?」

シャンプーを泡立てて手早く髪を洗いながら、ぎゅっと目を瞑る。そもそも弱った女を家に連れて帰り、家に泊める時点で”そういうこと”を見据えているに決まっているのだ。

そしてのこのこ部屋に上がった私は、文句を言う資格がない。

しかし風呂から上がったあんなは、自分の考えに恥じ入ることになる。

「浅霧くん、ごめんなさい…」
「え、何がですか?」

ローテーブルがあった場所には、きちんと布団が敷かれていた。

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