2021.01.06
ねぇ、いくつに見える? Vol.1断りの枕詞もあることだし、純太に悪気がないことはわかっている。だけど、不愉快に感じたことは事実だ。
その怒りを昇華させるため、そして彼から見た自分が純粋にどんな印象なのか知りたいという興味で、蘭子は質問を返してみることにした。
「逆に私、いくつに見えますか?」
「えっ…。どうだろう」
案の定、純太は戸惑ったような表情で蘭子を見つめてきた。
―面倒くさい女だって思わないでね。聞いてくるのが悪いのよ。
きっと彼は「予想よりも下の年齢を伝えた方がいいのか」とか「正直に答えるべきか」などと葛藤して、頭の中でグルグル考え込んでいるのだろう。
―身なりも落ち着いているし、しっかりして見えるけど、たぶん年下だろうな。
蘭子は答えを待っている間、頭を抱えている彼の姿を眺めながら、おおよそ35歳だろうと彼の年齢を逆に査定する。
「う~ん。32歳かな?」
長い沈黙の後、やっと口に出した純太の回答に、蘭子は感心した。
「…当たり、だよ」
実は少し上だが、どうせ今日だけの出会いだ。正直なことを言ってメリットなんてない。
しかも“32歳”という年齢は、蘭子が見た目年齢としてこれくらいだろうと見積もっている、ドンピシャの年齢だった。
―気を使って20代だって言われるかなと思っていたけど。
蘭子は今まで、初対面のほとんどの人物から「20代半ばにしか見えない」とか「年齢不詳」などという言葉で表現されることが多かった。
しかし蘭子の見た目で20代半ばだなんて、自分でもさすがに言いすぎだと思う。だから、正直に見た目年齢を告げてくれた彼に好感を持ったのだ。
「僕は33歳、同年代だね」
すると突然、純太はフランクに言葉を崩し始めた。蘭子は胸を痛めつつも「えー、そうなんだあ」といつもより声のトーンを上げて答える。
「同年代、うちの会社じゃあまりいないんだ。ベンチャーの中でも割と昔からある企業だからさ。前の会社は同年代か年下ばかりだったんだけどね」
聞くところによると、純太は就職してから何度か転職を繰り返しており、現在4社目なのだという。
前の会社は、ライフスタイルと勤務体系が合わなくて辞めたらしい。だから、平均3年ほどで転職しているという計算だ。
―時代は変わったなあ。確か、33歳ってゆとり第一世代くらいの年齢だよね。
世代だけで偏見を持つのは悪いことだと思いつつも、彼の年齢とエピソードが容易に結びついてしまったら、そう感じざるを得なかった。
自分が社会に出た頃は、まだ就職氷河期。
周囲の友人たちは、やっと就職できた会社に一生しがみつく決心をして、苦しくとも歯を食いしばって耐えてきたものだ。
そもそも蘭子は就職さえできなかった。100社以上に応募をしたが、1社も通らなかったから。
ならばと一念発起し、かねてから興味があったリフレクソロジーを学ぶ学校へ通ったことが、今に至るきっかけだ。
その後はエステサロンに勤務し、30歳になったのを機に、郊外に小さなサロンを開店した。
そうして努力の甲斐あって客も増え、4年前に広尾の一等地に店を移転できるまでになったのだ。
―たった数年、生まれた時期がズレているだけなのにな。
蘭子は純太と会話をしながらしみじみと思った。
…実は蘭子。1982年生まれの、38歳なのだ。
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