忘れられない“あの日”：「もう、限界…」結婚記念日に離婚を決意した女。決定打となった、夫からのプレゼントとは(2/3)[東京カレンダー

ドゥ・ラ・メール、ゲラン、シャネル・・・
大理石の洗面台に綺麗に鎮座した化粧品たち

毎日こうやってたっぷり時間をかけて、高級クリームを全身に丁寧に塗り込む

高価な美容液で丁寧にお手入れした肌は、若さに胡座をかいてた20代の頃よりもずっと綺麗

パーソナルトレーニングに通っているし
バレエのお教室も続けている
スパもエステも飽きるほど
レーザーのおかげでシミもない
ボトックスのおかげで皺もない
リフトのおかげで弛みもない

夫は、一体何が不満なのかしら

美しく弧を描くくびれも
豊満な胸も
重力に逆らったお尻も
絹のようになめらかな肌も

誰にも触れられることなく大人しく洋服の中に隠れている

宝の持ち腐れ

私は何のためにこんなに美を磨いているんだろう

「どんなに美しい花も水を注がなければ枯れてしまうんだよ…」

目の前で枯れかけていたクリスマスローズに水をあげた

私が枯れたら、彼のせい

でも、まだ、意地でも枯れたくない

自分で自分に水を注ぎ続けて、綺麗で居続ける

そうすれば、いつかまた、愛してくれるかもしれないから

彼は完璧な夫を演じてくれるから、外では愛妻家で通ってる

たくさんプレゼントもくれるし、記念日だって忘れない

でもね、いつからか、触れてくれなくなった

突然パタリとなくなってしまった

とってつけたように抱きしめてはくれるけど、罪を償うように、バーキンをくれるけど

私の心は、満たされることはない

オレンジボックスが増えるたびに、虚しい気持ちになっていく