高嶺のカナ Vol.1

高嶺のカナ:「まさか彼女からプロポーズされるなんて」対象外だった男が、憧れの女を射止めた秘策

「好きになった相手は、高嶺の花だった」。

もしもあなたが、手の届かないような存在の相手を好きになってしまったら、どうしますか?

石崎健人(27)が恋に落ちたのも、自分には釣り合わないと諦めていたような“高嶺の花”。

それまで身の丈にあった、分相応な人生を送ってきたはずの男が、憧れの女性を手に入れ、結婚まで漕ぎ着けた方法とは…?


「私と、結婚してください」

花奈(かな)がそう言ったとき、健人は、世界が静止したような錯覚に囚われた。

「えっ…」

情けない声が自分の喉から漏れたことに気づいたのは、そのすぐ後のことだ。

「…聞いてた?」

目の前の花奈が、怪訝そうな顔をする。

健人は戸惑いのあまり理解が追いつかず、ただ呆然と彼女の顔を見ていた。

そのとき頭に浮かんだのは、“彼女の表情にはこんなレパートリーもあるんだな”とか“いつも通り可愛いな”とか、そんなどうでもいい呑気なことばかりだ。

花奈からすれば一世一代の機会であったはずだが、この時の健人は、それ以上のことを考える余裕がなかった。そのくらい、混乱していたのだ。

「もう1回言ったほうがいい?」

痺れを切らした彼女は、怒ったような口調で顔を覗き込んだ。

「いや、ごめん。大丈夫。いや、でもなんで…」

慌てて首を振って否定するが、やはりわけがわからない。

「付き合ったときは、健人から言ってくれたから。今度は私の番かなって思って」

恥ずかしそうに言葉を絞り出す花奈の姿に、ようやく何が起きているかを把握しはじめる。同時に、健人の心臓は躍った。

一緒に居られるだけでも十分すぎるくらい満足だった。なのにまさか、自分が追いかけ続けてきた大好きな人からプロポーズされるなんて。これまでの努力、全てが報われた瞬間だ。

浮かれる健人をよそに、花奈は念を押すように言った。

「他の人の言う事は、気にしないでほしいの。私はあなたと一緒なら、絶対に幸せになれる自信があるから」

そう言い切る彼女を、健人は天にも昇る心地で見つめ直すのだった。

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