最高の相手と結婚したい。誰もがそう思うだろう。
ときめき、安定、相性の良さ…。だけど、あれもこれも欲張って相手を探していると、人生は瞬く間に過ぎていく。
東京に流れる時間は待ってはくれないのだ。
与田彩菜も、婚活に励む女のうちのひとりだ。彼女には、こんな持論があった。
「婚活は、同時進行が基本でしょ?」
—良くないこととはわかっているけれど、選択肢は多ければ多いほうがいい。…こっそり誰にもバレないように。
そんな主張をする、強欲な女。彼女は、思い通りに幸せを掴めるのか…?
「天秤女~恋は同時進行で~」一挙に全話おさらい!
第1話:「婚活は、同時進行が基本でしょ?」強欲な26歳美女の大胆すぎる計画
大人になってから「実は血液型が違っていた」という話は、たまに聞く。与田彩菜は、実際にそういう先輩を知っている。
幼少時にB型だと教えられ、ずっとB型らしくふるまっていたのに、初めての婦人検診の結果、本当はA型だと判明し、人生を見つめ直した先輩だ。
ーだけど、A型らしいとかB型らしいという考えが好きじゃないわ。血液型占いも星座占いも、当てにならないし。
彩菜はそんな風に斜に構えていたが、あるとき、彼女の考えを覆すような意外な出来事が起こったのである。
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第2話:「彼とは相性もイマイチだし、ときめかない…」26歳の美女が、同時に3人の男を求める理由
彩菜には現在、付き合って3カ月の立石直人という恋人がいる。5つ年上の31歳、マッチングアプリで知り合った税理士だ。
「年収は、年によってまちまちですが、大体2,500万円前後。貯金は多いとは言えませんが1,000万円弱。その代わりに7,500万円で購入したマンションを持っています。結婚後はパートナーと相談し、買い替えようと思ってます」
会ったその日に、淡々と言われた。自己アピールのつもりだったのだろう。だが不思議なことに嫌味に聞こえなかった。むしろストレートで、そこが好印象だった。
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第3話:「昼は彼氏と、夜は別の男と…」。何食わぬ顔で男をハシゴする、26歳美女の本音
「先月、ロンドンにあるウチの子会社で、不適切会計が発覚してね」
与田彩菜をミーティングルームに呼び出した上司は語りだした。
「だから現地の監査法人にサインを貰えていない状態なんだ。そこで与田さんには、そこにいる服部さんと一緒にロンドンへ出張してもらいたい」
「え!?ロンドンに一緒に?」
彩菜は思わず声を漏らし、服部蓮をちらりと見た。蓮はさわやかな笑みで返してくる。蓮は監査法人の会計士だった。
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第4話:「あの夜、本当の自分をさらけ出せた…」男友達と過ごした一夜を、忘れられない女
「単刀直入に言うとさ…。彩菜、俺と付き合ってほしいんだ」
日曜の昼、『ベーカリー&カフェ 沢村 広尾プラザ』で、男友達の矢野大輝が、クロワッサンにもカプチーノにも口をつけず、そう切り出した。
「待って待って。混乱する。何言ってるの?」
笑いながら彩菜は答えたが、大輝は真顔で「本気だ」と言った。
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第5話:「途中で放り出されるなんて…!」出張先のホテルの部屋で、男からお預けを食らった美女
彩菜と蓮は乾杯した。蓮もまたソファの端に座っているので、二人の間には一人分の距離がある。
「先ほどの話の続きを、いいですか?」
蓮がそう切り出して、彩菜は頷く。
「与田さんも俺と同じで、好きな異性には“ときめき”が必要だと、おっしゃいましたよね」
「ええ」
「…俺が、与田さんにときめいていたこと、気づいてましたか?」
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第6話:「こんなに相性の良い男、他にいない…」対象外だった男のアプローチに、美女が落ちた理由
「ところでさ、いまさらだけど…。なんで急に、私と付き合いたいって思ったの?」
ロンドン出張前、大輝にアプローチされた時は「デートしたらその理由を教える」と言われていた。彼を受け入れ、夜を共にしてしまったが、聞いておきたいことではある。
「友達が離婚したんだ」
大輝の答えは、意外なものだった。
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第7話:「朝まで、あなたと一緒にいたい」夜中にコッソリ彼氏の家を抜け出して、女が会いに行った相手
「ロンドン出張の件がね、少し尾を引いてて…。年内には綺麗に終わらせないといけないから、ミーティングの後も残務処理に追われそうなの」
今度はウソをついた。ロンドンの件はおおむね片付いている。
「深夜までかかるかもしれないし、疲れちゃいそうだから、明日は自分の家に帰りたくて」
内心ドキドキしながらも、“そっか、なら仕方ないね”と直人が言うことを期待した。いつもの彼ならそう言ってくれるはずだ。だが、今夜の直人は違った。
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第8話:「いい加減、他の男とは別れろよ」。相性バツグンの男から、女が決断を迫られた夜
『今度こそオススメできる鮨屋を見つけました』
蓮からは、そうLINEが入っていた。提案された店は、たしかに彩菜の興味を引いた。ミシュランで星を取っているその店は、食通の友達が絶賛していたことがある。
『素敵なお店です。ぜひ行きたいです』
だが、返信をしつつも彩菜は気が引けていた。なにしろ、天秤恋愛の答えは、ほとんど見えつつあったからだ。
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第9話:「今夜だけは、嘘でいいから好きと言って」。プラトニックな男女が一線を越えてしまった最後の夜
蓮が予約してくれた『いちかわ』では、絶品の鮨を堪能することに集中した。だから真面目な話は、店を出た後にするしかなかった。
「でも、なんか違うなって思ったんです。一方的で、身勝手なこと言ってるってわかってます。だって恋愛が始まっていたわけではないし、告白したりされたわけでもないし…」
「僕もそういう目で見てましたよ、与田さんのこと」
蓮は突然、彩菜の言葉を遮った。あくまで淡々とした口調だ。
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第10話:「他の男に抱かれたくせに」。数多の男を手玉にとる美女が、奈落の底に落とされた瞬間
LINEのやり取りを盗み見た直人から「自分と同棲して毎晩一緒に過ごすか、大輝と会わせるか」の二択を迫られた。
だが同棲するわけにはいかない。同棲すれば天秤恋愛が不可能になり、大輝とは別れるしかない。もはや「直人」か「大輝」か選ぶ段階にきている。だが、彩菜の答えはすでに出ていた。大輝だ。
「だから申し訳ないんだけど、直人に会ってほしいの」
すると、電話越しの大輝は押し黙った。
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第11話:「君みたいな女、その程度の男しか寄ってこないよ」。男にモテているつもりが、全否定された女
―ていうか、なんでこの私が、こんな気持ちにならなきゃいけないの?
怒る資格は自分にはないことは、わかっている。それでも腹が立つ。
―私は悪くないわ。私をフッた男たちが悪いの。直人も、蓮も、大輝も全員最低。
心の中だけで悪態をついていると、幾分ストレスが発散され、不思議と気力も湧いてきた。そんなある日のことだった。直人から突然、LINEが来たのだ。
『会って話したいことがある』
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第12話:「相性の良さ=運命」秘めたる愛に気づいた女。しかし男が出した残酷な答えとは。
「大輝に直接、確かめたいことがあって、会いたかったの」
「…いいよ。この際だから何でも聞いて」
観念したように大輝が言ってくれたので、彩菜は姿勢を正して、話を始める。
「私と大輝は『相性』が良かったと思うの。いろんなことの『相性』が本当にぴったりだった。友達の関係だった頃からそう思ってた」
「俺もそれは思っていた」
「でも、本当にそれだけだった?」
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