赤坂のアットホームなイタリアン『aniko』
「あの、一人なのですが…」
「いらっしゃいませ。もちろん、大歓迎ですよ」
おそるおそる店内に入った私を、人の良さそうな店員さんが笑顔で迎え入れてくれた。
センスの良いアンティーク家具が揃えられた店内は、イタリアの古き良き邸宅のダイニングにお邪魔したような明るさと、アットホーム感があった。
奥の方に広がる洞窟のような半個室に、オープンテーブル。そして美しい木目が印象的なカウンター席の、6席のうち1席には、私のように女性一人で来ているお客さんもいて、ほっと胸を撫で下ろす。
ー初めての、ひとりイタリアン。
高鳴る胸の鼓動を抑え、早速オススメのワインを聞き、グラスでいただくことにする。
「当店は、マルケ地方の料理のお店なんですよ」
ワインを注ぎながら店員さんがそう教えてくれたのだが、正直、馴染みのない地名だった。
イタリアの中部にあるマルケ地方は、アドリア海沿岸に位置し、豊富な魚介類を誇る。さらに内陸部にはジビエが堪能できる街があり、美食家たちの間で注目されている地域らしい。
そんな豆知識を聞きながらいただくイタリア土着品種の赤ワインは、いつも以上にすっと身体に染み渡っていく。
そういえば、朝から何も食べていなかったことに今更気がついた。私は空腹を満たすかの如く、すぐに出てくる料理を注文した。
そして、まもなくして出てきた「オリーブの肉詰めフリット」を一口食べた途端、笑顔がこぼれたのだった。
サクッとした薄い衣に包まれた、みずみずしい「ラ・ロッカ」のグリーンオリーブ。ふっくらとしたオリーブの中に詰まっているジューシーな肉の旨味と、ほのかに感じる、香味野菜や複数のスパイスの味。
程よい塩っ気と肉汁のコンビネーションは癖になる美味しさで、気づけば2、3個立て続けに口に運んでしまった。
「これ、美味しい…!」
「そうですか?良かったです。うちの人気メニューなんですよ」
シェフの笑顔に救われて、オリーブを堪能していたら、ワイングラスがいつのまにか空になっている。
その時までは、少しテンションが上がっていた。だが、メニューを見ていた私は思わず手を止めてしまった。
なぜならそこには、“ラザニア”があったからだ。
この記事へのコメント
じゃあラザニア作った相手ってロブションで振ったやつと同一人物なの?社内だから知らないわけないし、先輩の彼氏取っておいてルミちゃんは「婚約おめでとうございます〜」とかいってたの?
スーパーサイコパス女だな...恐怖しかないわ...