病める時も、ふくよかなる時も Vol.4

「危ない...!」男性客で賑わうボルダリングジム。目眩に襲われた主婦を救った、男の正体とは

―病める時も、健やかなる時も。これを愛し、これを敬い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?―

かつて揺るぎない言葉で永遠の愛を誓い、夫婦となった男女。

しかし…妻が“女”を怠けてしまった場合でも、そこに注がれる愛はあるのだろうか?

結婚後、8kgも太ってしまった栗山美月。 太っていたって、愛されていると信じていたが…久しぶりに夫婦生活を持ちかけてみたところ、夫の誠司からは、あまりにも残酷な一言が返ってきた。

親友の桐乃にも呆れられた美月は、誠司の無理解に悩まされながらもダイエットすることを決意。手始めとして食事制限を始めつつ、ボルダリングジムの門をくぐった。


カーン!と大きな音を立てて、銀色の計量カップが床に落ちた。

「美月先生!大丈夫ですか!?」

お料理教室の生徒である小野さんが、美月の元へと飛んでくる。

美月は慌てつつも、床に飛び散ったマデラ酒を布巾で拭きながらその場を取り繕った。

「あらら、レッスン中にごめんなさいね〜」

だが、そう謝る美月の心はその実、言いようのない達成感で満たされている。ボウルをつかみ損ねてしまったのは、両腕がひどい筋肉痛に襲われていたからなのだ。

始めてボルダリングジムに飛び込んでから約2週間。これまでに5回ほど通ったが、その度に美月の全身はビキビキと音を立てそうなほど激しい筋肉痛になる。

ホールドと呼ばれる壁に設置されたカラフルな石を、難易度別のルートに沿ってゴールの石まで登るボルダリング。立て続けにやるとすぐに疲れてしまうため、登る度にこまめに休憩を取ることが推奨されている。

運動をしている時間は、実質わずか30分程度だろう。それなのに、終わってみればそのたった30分の間で、身体中の筋肉がまんべんなく、かつ激しく酷使されていることに美月は新鮮な驚きを感じていた。

おそらく自力で筋トレをしていたのでは、ここまで体を追い込むことはできない。

それに、設定されたルート上の石のみ触ることが許されるボルダリングでは、意外なほどに頭を使う。ゲーム性の高さも、スポーツが苦手な美月が楽しみながら続けられている理由の一つだった。

だが、美月を何よりもボルダリングへと駆り立てる理由は、また別にあった。

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