SPECIAL TALK Vol.59

~“当たり前”に風穴を開けて、世の中を最適化し続けてきた~

堀江:インターネットの出現で、情報は全部民主化されました。SNSでも、昔は知ることができなかった情報がすぐに出てきます。だから昔の常識に縛られていると、「専門家にならなきゃ」とか「専門家になるためには、長い時間がかかる」と思い込んでしまうけど、簡単にできることって、ものすごく増えているんです。そういう意味で飲食業界は、いまだに驚くほど古い常識に支配されている。だから言ってしまえば、めちゃくちゃ簡単なんですよ。

金丸:そんなこと言って、また炎上しますよ(笑)。

堀江:でも本当なんです。めちゃくちゃ簡単なのをみんな知らないだけ。

金丸:「鮨職人になるには修業はいらない」という発言もありましたね。

堀江:本まで出しましたから。昔は違っただろうけど、情報の民主化が起こったからこそ可能なんです。YouTubeには鮨の握り方がアップされているし、「ここの酢とここの米がいい」というような、美味しい酢飯のレシピもある。道具も進化していて、たとえばバーミキュラライスポットという炊飯器を使えば、ワンタッチで美味しい土鍋ごはんだって炊ける。

金丸:常識に縛られていると、そういう情報を得ようとしないでしょうね。

堀江:そうなんですよ。ネタはどこで仕入れればいいか、どうやってネタを切ればいいか、そんなことも全部ネット上に情報が出てますから。センスがいい人だったら1週間もかからずに、美味しい鮨を握れてしまう。YouTubeもクックパッドもない時代とは違うんです。

金丸:でも、発言には大反発を食らった。

堀江:本当のことを言われると、人は怒るんでしょうね。「そんなわけねーだろ」とか、ごちゃごちゃ言われて。「じゃあ実際にやってみせるわ」ということで、いま飲食店をいっぱい作ってます。

金丸:そういう理由ですか。面白いですね。

堀江:料理にしても何にしても、勝手なやり方で失敗したり、ただ教えられた通りにやっている人が本当に多い。たとえば魚の煮物を作るときに日本酒を大量に入れますが、なぜだかわかりますか?

金丸:臭みを取る。

堀江:そうですね。あとはコクも出る。でも、「お酒飲めないし」とか「あの香りが苦手だから」と言って、勝手にその工程を抜いちゃって、全然美味しくない煮物ができあがる。これって、“料理が下手な人あるある”なんですよ。

金丸:料理に限らず、“失敗する人あるある”ですね。

堀江:それに、どの飲食店もたいてい生ビールのサーバーが置いてありますが、あれってメンテナンスが毎日必要だし、大変なんですよ。だったら美味しい缶ビールを冷蔵庫に入れときゃいいじゃないの、という話で。とにかく常識に囚われすぎなんです。

金丸:たしかに。あらゆる事業において、そういった一つ一つの要素を「本当に必要なのか」と検証することが、イノベーションを生み出します。堀江さんはそれができるから、強いですよね。

堀江:要は基本を学んで、本質を理解して、あとは歴史と情報の分析をちゃんとやろう、って話です。

ロケット業界に風穴を。価格破壊のために研究中

金丸:ところで、ロケットはどうなんですか? 子どもの頃から好きで、今もロマンを追い求めている?

堀江:ロマンもありますよ。でも、ちゃんと事業にできる見込みがあるからやっているんです。僕は『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』『2001年宇宙の旅』とか、そういう作品の直撃を受けた世代です。しかも1969年に、アポロは月に行っている。だから子どもの頃は、「大人になったら、火星や木星だけじゃなくて、太陽系の外に行くのも普通だろう」と思っていました。

金丸:でも現実はそうなっていない。

堀江:そう。それはなぜか。理由を考えてみたら、国が宇宙開発をやってるからだな、と。

金丸:時間がかかりすぎる?

堀江:お金もです。部品ひとつをとっても、ものすごく高品質なものを使っていて、たとえば高性能なロケットは、ターボポンプというのを使います。 小さなロケットエンジンであるガスジェネレーターでターボポンプを回して燃料と酸化剤を送るのですが、そのガスと燃料と酸化剤が混ざってしまわないように、「シール」(漏れを防ぐ部品)が大事なんですよ。

金丸:漏れてしまえば、大爆発ですからね。

堀江:この絶対に漏れないシールはたしかに必要ですけど、めちゃくちゃ高価なんです。でも、そこをほかの技術でカバーできれば、多少精度の悪いパーツであっても安全を担保できるはず。今は、宇宙航空研究開発機構の角田宇宙センターというロケットエンジンの基礎研究所と提携して、いろいろな実験をしているところです。

金丸:ロケットのパーツがいったいどのくらいの値段なのか、私には見当がつかないんですが。

堀江:たとえば、燃焼のために使われるターボポンプ、その中の軸受に使われるシールは、1つ数百万円します。

金丸:1つで数百万!

堀江:しかも、ロケット1基につき、1つあればいいんじゃなくて、燃料側と酸化剤側にそれぞれ1つずつ必要で、さらにうちのロケットには、そのエンジンが10基ついています。

金丸:それだけで相当な額ですね。

堀江:僕はロケットを5億円で打ち上げられるようにしたいんです。でもこれまで通りのやり方だと、エンジンひとつで5,000万円もかかってしまう。

金丸:それが10基だと、エンジンだけで5億円ですか。

堀江:だからどうやって安くできるか、研究と実験を繰り返しています。かなり難易度が高いんですが、これを乗り越えない限り先がありませんからね。

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