1/3のイノセンス ~友達の恋人~ Vol.7

親友の彼氏から不意打ちのキス…!その瞬間、女が無意識にとった裏切りの行動とは

−本当に来るのかな。っていうか、何のために…?

帰路につく間、私の頭の中はずっと敦史のことでいっぱいだった。

…健一に「好きだ」と言われたことが、もう遠い昔の出来事のように思える。

今夜は健一とデートだと知っていながら、敦史はどうして私に連絡してきたのだろう。こんな夜遅くにわざわざ会いに来るなんて、一体どうしたっていうの。

突如として降りかかったその難題を解くのに、徒歩10分の道のりは短すぎる。気づけばあっという間に自宅マンションへとたどり着いていた。


…敦史は、本当にそこにいた。

植え込みが施された腰高のレンガに、明らかにしょんぼりとした様子で腰掛け佇んでいる。

「どうしたのよ、いきなり」

呆れ顔で問いかけても、敦史はこちらを見ることもせず、正面を向いたまま。そしてのんびりとした口調で、こう呟くのだった。

「どうしたんだろうなぁ…。なんか会いたくなった、杏に」
「え…」

その言葉に、私の心はぎゅっと掴まれてしまう。

心臓が口から飛び出しそうで、言葉を返すこともできず、息をするのもやっとなほどだ。

私は俯いたまましばし立ち尽くし、そして思い出したように、ほんの少しだけ距離を空けて彼の横に腰を下ろした。

「今まで健一と会ってたの?」

私が座るのを待って、敦史が抑揚のない声で尋ねる。顔をこちらに向けようとしないから、表情がよくわからない。

「えっ…?そう、ほら、仕事終わりに例のカメラマンの個展に行って、お腹空いたから恵比寿まで戻ってイタリアン食べて、それで…」

別に詳細を聞かれてもいないのに、私はなぜか慌てて、早口で経緯を説明してしまう。

そんな私の様子を見て敦史はふっと笑うと、まるで全てを見透かすような目でようやくこちらを見た。

「何をそんな慌ててるんだよ。…告白でもされたか?」
「…なっ、そんなわけ」

なぜだかはわからない。しかし私は咄嗟に否定をして、ムキになって敦史の方を向いた…その瞬間。

ふいに腕を掴まれたと思ったら、敦史が私の唇を奪った。


−え…?

「どうして」という疑問が浮かぶのと、私の理性が飛んでいったのは多分、同時だった。

ぐっと強く抱かれた肩と重なる唇。触れ合う感触だけが私を包む。

…もう、何も考えられない。まるで別世界にでも迷い込んだように、周囲の雑音が消えた。

私はすべてを忘れ去るよ......


【1/3のイノセンス ~友達の恋人~】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo