小百合が口にした、思いがけぬ言葉。それは、幸太の迷いを振り切るのに十分な力を持っていた。
「小百合ちゃん。俺、小百合ちゃんのことが好きだ。良かったら僕と付き合ってくれないかな」
後先考えず、口走っていた。
これまでの自分じゃ考えられない。受け入れてもらえる確証もないのに、そもそも小百合には彼氏がいるのに、こんな風に博打に出るなんて。
万が一の可能性で、奇跡が起きるんじゃないか。
そんな願いを込めて、幸太は小百合の瞳を見つめる。…しかし彼女の表情はというと、驚きのあと、みるみる困惑へと変わっていった。
−そう、だよな…。
もう、返事は聞かなくてもわかった。奇跡など、そんな簡単に起きやしない。
「ごめんなさい。ちょっと…考えさせて」
結果よりも、価値のあること
その後のディナーはキャンセルし、夜になる前に幸太は車のオーナーである石田に、ポルシェ911を返却しに行った。
石田は幸太と、自らの愛車の姿を認めると、「おかえり!」と爽やかに笑った。
晴れ晴れ、とは言い難い幸太の表情を見て察したのだろうか。デートの行方について、石田は何も聞こうとはしない。
別に報告する義務はない。そもそも石田と会うのは今回で二度目だ。
しかし幸太は石田にきちんと話しておきたい気持ちになり、迷った末に自ら切り出すことにした。
「僕、多分フラれました。車も…腕時計までシェアしてくださったのに、やっぱりダメでした」
最初からわかっていたこと。そんな風に自分を納得させ、現実を受け入れたはずだった。だが言葉にすると改めて自分の力不足を痛感する。
「ははは」と自虐を込めて笑う幸太。しかし石田はそんな幸太をやんわりと制した。
「まあ結果はさ、後から付いてくるものだから。男ならつべこべ言い訳せず、欲しいものは全力で取りに行くべきだ。そして君は、自ら一歩を踏み出した。まだ若いんだ、長い目で見れば、フラれたってなんだって、そのことの方がよっぽど価値のあることだよ」
石田の言葉には、経験に裏付けされた深みがあった。
思わず目頭が熱くなり、幸太は慌てて瞬きをする。そんな自分を誤魔化すようにキーと腕時計を手渡すと、幸太は深々と頭を下げた。
「今回は本当に…ありがとうございました」
石田との出会いは、きっと忘れられない。そんなことを考えながら、幸太は自らを焚きつけるように言葉を続けた。
「僕も将来こんな車に乗れるように...石田さんみたいになれるように、頑張ってみようと思います」
幸太の言葉に、石田は「うん」と大きく頷く。そして最初に出会った時と同じように、肩を二度、力強く叩いた。
深い感謝とともに石田に別れを告げ、踵を返して歩き出した、その時だ。
幸太のスマホに、一通のLINEが届いたのだ。
差出人は…小百合からだった。
▶NEXT:8月9日 金曜更新予定
小百合から届いた一通のLINE。フラれたはずの幸太に一筋の光が差す…?
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