「いいクルマが欲しい」という決心が、男を上げる。平凡男がCA美女を落とせた理由(1/3)[東京カレンダー

あなたはもう経験しただろうか。

それまでの価値観をがらりと覆す、人生を変えてしまうほどの“出会い”を−。

人材派遣会社に勤める幸太（28歳）は将来に対し漠然とした不安を抱きつつも、“そこそこ”の人生に疑問を抱かず生きていた。

ところがある日、美人CA・小百合と出会い一目惚れをする。

すぐさま彼氏がいると聞かされ凹むが、勢いでデートに誘うとOKの返事が届く。ポルシェ911での鎌倉ドライブは順調で、幸太は捨て身の告白を敢行…！

結果、あえなく撃沈した幸太ではあったが、しかしそこに小百合から一通のLINEが届く。

小百合から届いた、一通のLINE。

石田に車を返却し、マンションの外に出た幸太は、一度ぎゅっと強く目を閉じた。そして祈るような思いで、ゆっくり瞳を開ける。

うまくいくわけなどない。これは、はっきりNOを伝えるためのLINEだ。

わかっているのに…。前日に小百合が見せた視線が、笑顔が、どうしても期待を運んでくる。

しかし遠慮がちに膨らんだ淡い期待は結局、すぐさま泡となって消えた。

“幸太くん、ごめんなさい”

謝罪から始まった小百合からのLINEは想像通り、幸太の告白が無意味であったことを告げる内容だった。

「はは、そうだよなぁ…」

予想通りだ。わかっていたこと。それでもやはり、どうしようもなく胸が痛む。

俯いた頭が、どうにも重くて上がらない…だがその時、ふとついさっき石田がかけてくれた言葉が思い出された。

−まだ若いんだ。長い目で見れば、フラれたってなんだって、踏み出した一歩の方がよっぽど価値のあることだよ−

「そうだ」と、幸太は思わず声に出す。

−そうだ。このまま平凡な人生で終わるわけにはいかない。小百合ちゃんとのことも、石田さんとのことも…せっかくの出会いを無駄にするのは嫌だ…！

小百合との出会いを、無駄にしたくない。

そのまっすぐな想いが、この時、幸太にある決心を固めさせたのだ。