あなたはもう経験しただろうか。
それまでの価値観をがらりと覆す、人生を変えてしまうほどの“出会い”を−。
人材派遣会社に勤める幸太(28歳)は将来に対し漠然とした不安を抱きつつも、“そこそこ”の人生に疑問を抱かず生きていた。
しかし美人CA・小百合との出会いが、幸太の人生を大きく変えていく。
イケてるアラフォー男・石田との出会い
「わ…すげぇ…」
六本木にある高級マンションの、地下駐車場。
轟くようなエンジン音を響かせてやってきた真っ白なボディに、幸太は思わず声を漏らした。
ポルシェ911。憧れの高級車が目の前にある。
「じゃあまず…操作方法を教えないとだよな。助手席に乗って」
ドラマのワンシーンかのように静かに開いた窓から、つい先ほど石田と名乗った男が顔をのぞかせた。
緊張しながら助手席へと乗り込む。
操作方法を丁寧に説明しながらコックピットに悠然と佇む石田を、幸太はチラチラと盗み見る。
40代半ばくらいだろうか?しかし肌なんか艶々としていて少しも枯れたところがない。会社にいる40代と同じ年齢にはとても見えなかった。
「今日はどこにいくの?もしかして、彼女とデート?」
白い歯をのぞかせ、爽やかな笑顔で尋ねる石田。
「はい…実は、一目惚れした女性がいて。彼氏がいるんですけど…でも思い切ってデートに誘ったらOKしてくれて…」
そうなのだ。
実は慎太郎から、個人間でクルマをシェアするサービス『Anyca』の存在を教わり、ダウンロードしたあと、幸太はその場の勢いで小百合をドライブデートに誘った。
当然、ダメ元だった。しかし思いがけず彼女からOKの返事が届いたのだ。
幸太の返事に、石田は「ふーん」となにやら意味深に頷く。そして「ちょっとここで待ってて」と言い残すと、車を降りてどこかへ行ってしまった。
「お待たせ。…ついでにさ、これも貸してあげるよ」
しばらくして戻った石田は、幸太に再び白い歯を見せた。手渡されたのは、有名ブランドの高級腕時計。
ずしりと感じるその重厚感に戸惑いながら「え、でも…」と焦っていると、そんな幸太の言葉を遮り、石田はこんなことを言った。
「もっと自分に自信持って。君、けっこういい男なんだからさ」