元・夫婦 Vol.7

「夫を奪った、あの女が来た?」女社長のトラウマをえぐる、不吉な一本の電話

“夫婦”

それは、病めるときも健やかなるときも…死が二人を分かつまで、愛し合うと神に誓った男女。

かつては永遠の愛を誓ったはずなのに、別れを選んだ瞬間、最も遠い存在になる。

10年前に離婚した園山美月(35)は、過去を振り切るように、仕事に没頭していた。

もう2度とあの人に会う事はないと、思っていたのに―

念願だったモデルプロダクションを立ち上げ、長年の夢をようやく掴みかけていたそのとき。

元夫との思わぬ再会に、美月は辛い過去を思い出し、苦しんでいた。

“元夫の子供”という複雑な関係ではあるが、小春を一流モデルに育てる決意をした矢先、ロケに向かう飛行機に急病で遅れてしまったと連絡が入る。裕一郎の機転で、何とか乗り切ったものの、今度は2人が元夫婦であることがバレてしまい―。


その夜、美月と裕一郎は、小春に真実を伝えることにした。

まだ起きていた小春に向かって、裕一郎が言いにくそうに切り出す。

「小春、もう気づいているかもしれないが…」

すると小春は、平然とした顔で答える。

「パパと美月さんが昔結婚してたってこと?それならとっくに知ってる」

「えっ…」

過去を知られてしまったとは思っていた。ただ、その言葉は予想外で、思わず美月は聞き返す。

その表情は、毅然としていて、小春の強い意志を持つ瞳が星空の下で美しく光っている。美月はその迫力に圧倒されそうになりながらも、もう一度問いかけた。

「小春、とっくに知ってるってどういうこと?」

「ママから聞いてたから」

「優香子から?本当か?」

驚いたのは裕一郎も同じだ。

「そう。だからママは『Chel-sea』に入ることを反対していたの。今でももちろん認めてくれてない。でも、私は美月さんと一緒に頑張っていきたいの。はじめて私のモデルになって世界で活躍したいって夢に真剣に向き合ってくれた大人だもん」

しっかりとした口調で話す小春は、とても大人びて見えた。

「だからパパ、勘違いしないで。美月さんにもわかってほしい。2人が昔、どんな関係だったとしても、私は気にしない。

2人も普通にしててほしい。無理に隠そうとしておどおどするのも、不自然によそよそしくするのも、私情を持ち込んでるのと一緒だと思う」

小春は、誰よりも大人だった。美月はこれまでの自分の振る舞いを恥ずかしく思い、申し訳なさと情けなさでいっぱいになる。

そして、ここまで自分を慕ってくれる小春のために、なんとしてでも結果を出そうと強く思ったのだ。

「というわけで、話はもう終わりだよね。おやすみなさい」

コテージに戻る小春の後ろ姿を、美月と裕一郎は言葉をかけることもできず、ただ見送ることしかできなかった。

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