2019.05.10
噂の女 Vol.10東京にいる一部のアッパー層の間で、最近、密かに“噂”になっている女がいる。
彼女の名は、春瀬紗季―。
一聞すると爽やかで可愛らしい女性を想像するが、彼女の“噂”はそれを鮮やかに裏切る。
大抵の者は「悪魔のような女だ」と言うが、ごく一部の間では「まるで聖女のようだ」と熱狂的に支持されているのだ。
その正体は掴みどころがなく、彼女の噂は常に絶えない。
彼女の正体は?
「噂の女」一挙に全話おさらい!
第1話:悪魔のように美しい女を狙う、小賢しい男。常人には思いつかぬ方法で彼女の心を掴んだ夜
僕は今日、“ある女性”に会うために大学時代からの親友・亜希子に頼み込み何とかパーティに出席させてもらったのだ。
「私も噂で聞いただけなんだけどね…。なんか色々な人と関係があるらしいよ?それも地位やお金のある男の人ばかり…。爽太郎、あんな女狙ってるの?やめておきなよ」
亜希子には、しかめ面しながらこんなことを言われたが、逆に彼女への興味関心は高まるばかりだった。
そうして会場内の雰囲気に圧され気味だった僕は気を取り直し、ターゲットにしている女性…“噂の女”を探すことにした。
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第2話:「口説けなかった女はいない」と豪語する男が連絡先すら教えてもらえない、謎の美女とは
あの日、名刺を渡したあと紗季のことを知ろうと話題をふった矢先、彼女の友人だと言う人物が現れ、結局それきりになってしまった。
あれ以来、会うことは愚か連絡さえ取っていない。そもそも、彼女の連絡先すら知らないのだ。前回はたまたまパーティーに出席するという情報を得られたのだが、それ以外の情報はない。
だからこうして、多忙な仕事の合間を縫って、彼女が現れそうな所を順に訪れているのだが、未だ空振りに終わっていた。
その時、ブーブーッと机の上に置いてあったスマホが振動し、画面にメッセージが浮かび上がった。
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第3話:「あなたの目的は、何…?」美女を騙して秘密情報を得ようとする、狡猾な男の罠
「ねぇ、爽太郎さん。あなたの目的は、一体何?」
カウンターの奥にある照明だけを頼りにした薄暗い空間は、居心地の良さを与えながらも、見せたくない部分をそっと分からないように隠してくれる。
その時僕は内心ひやりとしていたが、何食わぬ顔で返した。
「目的…?それって、どういう意味ですか?」
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第4話:「ただ、会いたかったの…」冷静な男が理性を失い、噂の美女に衝動的にキスした代償
ー紗季が、僕から桐生先生の情報を得ようとしているー
これが事実ならば、こんな厄介なことはない。お互いに相手から情報を欲しがっている。けれど、その情報は2人の大切な人を陥れるもの…。
ーさて、どうしたものか…。
紗季とどう向き合えば良いのか分からない。しかし彼女と会うことを思うと、緊張や警戒心に紛れて、なぜか少し心がふわりとするのだった。
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第5話:「あのキスは何だった…?」急接近したはずが、一向に連絡のつかない女。焦る男が口走った禁断の言葉
ーやってしまった…。
紗季にキスをして以来、何の音沙汰もなかった。あの日、彼女は僕を避けるように帰ってしまったが、やはり怒っているのだろうか…?
彼女のことを考えると、無性に心が掻き乱され、どうしていいのか分からなくなっていた。そんな時、例の情報屋から連絡が来た。
「少し、黒田について分かったことがあります」
彼の言葉に、僕は慌てて彼に会いに行く事にした。
第5話の続きはこちら
第6話:「キス、する…?」1か月ぶりのデートで突然囁く美女。我を忘れた男が過ごす、禁断の夜
最近、都知事選出馬を意識した好感度アップのため、さまざまな場所に積極的に顔を出す日々が続いている。早朝から遅くまで駆けずり回っているため、普段のデスクワークはちょっとした空き時間でこなすしかなく、息つく暇もない日々だ。
―ごめん、今気がついた。悪いけれど今日はちょっと。また今度でいいかな?
以前の僕であれば、こんな状況だとしても、亜希子からの誘いを断ることはなかったと思う。
けれど最近は前ほど、彼女のことを想うことはなくなっていた。
第6話の続きはこちら
第7話:「僕には返せないほどの恩がある」好きな女性と恩人の間で揺れる政治家秘書が隠す、出生の秘密
紗季と一晩を共にしてから、彼女を想う時間がさらに増えていた。あれ以来彼女が僕の連絡を無視することはなくなり、恋人のようにデートを重ねている。
ーダメだ、こんな時に。もっと気を引き締めないと…。
こうして浮かれた気持ちを勘づかれている場合ではない。最近の桐生事務所は、ピリピリとした空気に包まれているのだ。
桐生先生の、賄賂やセクハラ疑惑などの根拠もない悪い噂が出回ってから明らかに好感度が落ち、あらゆる対策をしてもイメージ回復が難しい。選挙の出馬を控えたいまは、悲観的なムードが漂っていた。
第7話の続きはこちら
第8話:「彼をどれだけ好きか教えてくれたら、もう近づかない」ライバル美女の挑発に乗った女の誤算
「あの、私、原田亜希子と申します。あの、爽太郎の友人で…」
「あぁ、爽太郎君の…」
彼女はそう言ってニコリと笑った。見た目から推測するに、私と同じ歳か、それより上か…。大人っぽい雰囲気から年上のように見えるが、肌や髪質は20歳そこそこのように瑞々しい。
「あの…、隣、いいですか?」
「亜希子ちゃんね、どうぞ。丁度一人で退屈していたの…」
第8話の続きはこちら
第9話:「なぜ彼女がこんなものを…?」噂の女が持っていたある政治家の不正の証拠。信じていた女の関与に苦悩する男。
「…爽太郎?」
耳に響く、僕の名前を呼ぶ彼女の甘い声。僕はなんとか理性を保ちながら彼女に提案した。
「今週会えない?仕事終わりにでも、紗季の家で会おうよ」
「私の家…?……いいわ」
紗季は意外にもすんなり了承してくれた。彼女の家に行くのはこれが初めてになる。僕は通話終了ボタンを力強くタップし、スマホを抱えながら脱力した。やっと…、決行の時が来たのだ。
第9話の続きはこちら
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