東京にいる一部のアッパー層の間で、最近、密かに“噂”になっている女がいる。
彼女の名は、春瀬紗季―。
一聞すると爽やかで可愛らしい女性を想像するが、彼女の“噂”はそれを鮮やかに裏切る。
大抵の者は「悪魔のような女だ」と言うが、ごく一部の間では「まるで聖女のようだ」と熱狂的に支持されているのだ。
その正体は掴みどころがなく、彼女の噂は常に絶えない。
その女に近づいて正体を暴こうとしている人物がいた。彼の名は、宮永爽太郎(29)。
彼は普段、政治家・桐生浩太の公設秘書をしている。そしてその対立候補とされているのが、黒田源。春瀬紗季は黒田の愛人と噂されており、爽太郎は彼の不正を暴くために、彼女に近づくのであった。
何とか紗季の連絡先を得た爽太郎だったが、デートに誘っても全く返事がない。
紗季も爽太郎の目的に勘づき、何かしらの情報を得ようとしているのではと考えた爽太郎は、もう一度彼女に仕掛けてみることにした。
―先日のリベンジをさせてください。今度こそ、あなたを満足させてみせます。
これまで幾度食事に誘っても全く返事をくれなかった紗季。それなのに僕のこのメールには、あっさりとした返信が来た。
ーいいわ。
情報について言及しなかったのは、万が一彼女の狙いがそこではなかった場......
またはアプリでコイン購入をすると読めます
この記事へのコメント