東京にいる一部のアッパー層の間で、最近、密かに“噂”になっている女がいる。
彼女の名は、春瀬紗季―。
一聞すると爽やかで可愛らしい女性を想像するが、彼女の“噂”はそれを鮮やかに裏切る。
大抵の者は「悪魔のような女だ」と言うが、ごく一部の間では「まるで聖女のようだ」と熱狂的に支持されているのだ。
その正体は掴みどころがなく、彼女の噂は常に絶えない。
興味を持った宮永爽太郎(29)は、ある目的で何とか彼女を振り向かせようとする。しかし、彼の運命は彼女と出会ったことで、思わぬ方向へと転がっていく…
二人の出会い
ダンッダッダッダンッ
渋谷にある白と黒を基調とした、モダンな造りのイベント会場のドアを開けると、ノリの良いクラブミュージックが心地良い音量で流れてきた。
受付には、「Anniversary Party」と書かれている。
僕は受付をしている背の高い精悍な男性に、自分の名を「宮永爽太郎」だと告げ、中へと案内してもらった。
会場はすでに200人以上の人々で賑わっている。
今若者を中心に最も人気のあるIT企業『KE net partner』が主催する周年パーティだ。
KEとは、社長の「江戸川啓介」の頭文字だと言う。近頃はメディアでよく取り上げられるため顔は目にしていたが、その優しそうな雰囲気からは想像もつかないほどの、なかなかのやり手らしい。
会場内には、フォトジェニックな、カラフルで豪華な食事や飲み物がずらりと並ぶ。それらを取り囲むように、有名インスタグラマーや少し名の知れたモデルたちが、自撮りにせっせと勤しんでいた。
普段こんな煌びやかな世界とは無縁な生活を送っている僕は、この独特の雰囲気に一瞬たじろぐ。
だが、この機会を無駄にする訳にはいかない。
僕は今日、“ある女性”に会うために大学時代からの親友・亜希子に頼み込み何とかパーティに出席させてもらったのだ。
「私も噂で聞いただけなんだけどね…。なんか色々な人と関係があるらしいよ?それも地位やお金のある男の人ばかり…。爽太郎、あんな女狙ってるの?やめておきなよ」
亜希子には、しかめ面しながらこんなことを言われたが、逆に彼女への興味関心は高まるばかりだった。
そうして会場内の雰囲気に圧され気味だった僕は気を取り直し、ターゲットにしている女性…“噂の女”を探すことにした。
この記事へのコメント
なのに、宣伝が再生不可で更新マークがずっとくるくる。。。
久々にワクワクする
これからの展開がすっごく楽しみです