噂の女 Vol.6

「キス、する…?」1か月ぶりのデートで突然囁く美女。我を忘れた男が過ごす、禁断の夜

東京にいる一部のアッパー層の間で、最近、密かに“噂”になっている女がいる。

彼女の名は、春瀬紗季―。

一聞すると爽やかで可愛らしい女性を想像するが、彼女の“噂”はそれを鮮やかに裏切る。

大抵の者は「悪魔のような女だ」と言うが、ごく一部の間では「まるで聖女のようだ」と熱狂的に支持されているのだ。

そんな噂の女に、IT企業が主催したパーティーで出会った宮永爽太郎(29)は、政治家の黒田源の不正の情報を得るため、彼女に近づこうとする。

中々思い通りに進まない紗季との関係に痺れを切らした爽太郎は、思わず彼女にキスをし、徐々に近づいていく。

そして気がつくと、本来の目的を忘れて徐々に彼女に本気になっていた。


―今夜、会えない?

スマホのロック画面に浮かび上がったその文字に、一瞬紗季からのメッセージかと心が跳ねた。しかし送り主は、親友の亜希子だった。

この日桐生先生を家まで送り届けたあと、時刻は23時を回っていた。

最近、都知事選出馬を意識した好感度アップのため、さまざまな場所に積極的に顔を出す日々が続いている。早朝から遅くまで駆けずり回っているため、普段のデスクワークはちょっとした空き時間でこなすしかなく、息つく暇もない日々だ。

―ごめん、今気がついた。悪いけれど今日はちょっと。また今度でいいかな?

以前の僕であれば、こんな状況だとしても、亜希子からの誘いを断ることはなかったと思う。

けれど最近は前ほど、彼女のことを想うことはなくなっていた。

―了解。また近いうちに。
―分かった、また連絡するよ。

亜希子にそうLINEを送った後、新着メールに紗季の名前がないか確認する。

前回会った時、なんとか1ヶ月先の予定を抑えた。「そんな先のこと、分からない」と言われたのだが、僕はなんとしてでも彼女との約束を取り付けたかったのだ。

ーあと1週間か…。この日まで、何とか頑張ろう…。

僕は紗季と会えることを楽しみに、疲れ切った身体に熱いシャワーを浴びせ、自宅で残った仕事に取り組んだ。

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