
シュガー&ソルト:いつしか疎遠になった、幼馴染。突然の“玉の輿婚”の知らせでザワつく28歳女の本音
女の人生、その勝敗はいつ決まるのかー?
それは就職・結婚・出産など、20代で下した決断に大きく左右される。
ある分岐点では「負け」と見なされた者が、別の分岐点では幸せを勝ち取っていることなんてザラにあるのだ。
昔からその分岐点において、全く異なる結果になる2人がいた。
福岡出身の塩田ミキと佐藤菜々子、28歳。
大学受験に失敗したミキは、就職でようやく菜々子に勝ったと思っていたが、一方の菜々子はまた別の道で幸せを勝ち取っていた。
2人はどのように、東京での20代を駆け抜けていくのだろうかー?
1年ぶりの帰省で、福岡空港に着くと、母が遠くに待っているのが見えた。
28歳の塩田ミキはネブローニのヒールに、ディオールのブックトートを持ち、トレンチコートをなびかせて歩いていく。
「おかえりなさい。すっかり東京の人になって」
帰ると必ず聞く母の言葉に、昔の自分とは違うという実感が湧いてくる。そしてこの街に懐かしさを覚えるたび、満足感は不思議と増すのだった。
「ねえ、ミキちゃん」
空港から実家へと車を走らせる途中、母は喜々とした表情で口を開いた。
「菜々ちゃんの結婚の話、びっくりね」
ーえっ……。
「結婚」、それは間違いなく喜ばしい知らせのはず。女の関係性を度外視できるのならば。
たしかに最近は、結婚式に呼ばれることも増えていた。でも、まさか次に「結婚」というワードとともに聞く名前が「菜々子」であるなんて。
一体、相手はどんな人なんだろう。
聞きたいことは山ほどあるけれど、自分から聞き出すことなどできるはずはない。思わずスマホを確認すると、菜々子とのLINEは5年前で終わっていた。
同じ東京にいながら、5年間、一度も会っていなかったのである。
「ミキちゃん?」
ハッとしてスマホから顔を上げる。
「ごめん、なんだっけ?」
「菜々ちゃんのママから聞いたけど、結婚式、ハワイで家族だけでやるってね。菜々ちゃん、恥ずかしがり屋なのは変わらないのね」
―ハワイなんだ。
ミキの脳裏に、元彼の健斗に連れて行ってもらったハワイの澄んだ青い海が浮かぶ。
「ハワイって…。結構お金かかりそう」
口にしたそばから、嫌な女だと自分で思った。しかし母は何の気なしに続ける。
「あの大病院の跡取りだもの、問題になるような金額じゃないでしょう」
結婚相手の素性を何の気なしに知ってしまい、鼓動が速くなるのを感じた。
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