東京女、27歳 Vol.8

「年収1,000万以上で優しい人だったら、好きになれるはず」条件重視だった27歳女が掴んだ意外な幸せ

東京には、全てが揃っている。

やりがいのある仕事、学生時代からの友だち、お洒落なレストランにショップ。

しかし便利で楽しい東京生活が長いと、どんどん身動きがとれなくなる。

社会人5年目、27歳。

結婚・転勤などの人生の転換期になるこの時期に、賢い東京の女たちはどんな決断をするのだろうか。

東京の荒波をスマートに乗りこなしてきたはずの彼女たちも、この変化にうまく対応できなかったりもする――。

前回は、20代でマイホームの夢を叶えることに必死になるも、夫との関係性を見直した綾香を紹介した。今回は―?


<今週の東京の女>

名前:美羽
年齢:27歳
職業:弁護士事務所 秘書
年収:500万
住所:初台(実家暮らし)

File8:美羽の場合


「あっ、ごめんなさい」

遅い昼休みをとると、オフィスに戻る前に大体『ワイズ サンズ トウキョウ』に立ち寄り、飲み物をテイクアウトすることにしている。

前に立っていた若い男性が、会計待ちの間にコートを羽織ろうとして、彼の腕が私にぶつかったのだ。

ぼーっとしていたから特に気にならなかったのだが、次の瞬間、男性はこう言った。

「すみません、この方のカフェラテも一緒に」

こちらがあわあわしているうちにさっと会計を済ませ、店から出て行く男。

「え…?ど、どうも…」

早足に去られてしまい顔もあまり分からなかったが、男性慣れしていない自分が決して嫌な感情を抱かなかったことに驚いた。



「さあ、いただきましょう。美羽ちゃん、紅茶は『マリアージュ・フレール』のでいいよね」

母がケトルからお湯を注いだ途端、ティーポットから甘い香りが漂う。

「やっぱりマルコ ポーロのフルーティーな香り、いいね。癒される~」

一緒に手作りしたクッキーを口に運び、紅茶を楽しむ。穏やかな休日の午後。

だけど、ちょっとうんざりする時もある。母の“いつもの質問”の頻度は増えたし、これを尋ねられる度に人生が停滞しているのを感じざるを得ないからだ。

「美羽ちゃん、今度のデートの約束はいつなの?」

はあ、またか。

「デートだなんて、やめてよ。相談所の人が紹介してくれた人に会うだけじゃない。それに、相談所の紹介も…しばらくいいかな。だってこの間の人、写真と雰囲気が違って…。適当に切り上げて帰ってきちゃった。」

少しだけ頬を膨らませる素振りをし、一応「かわいい娘」を演じておく。

「美羽ちゃん、ママのお友達の息子さんなら、紹介できるかもよ?」

慌てていいよいいよ、と言い、会社の愚痴をこぼしてお茶を濁す。

母は、素敵な男性と結婚することが、私にとって一番の幸せだと信じている。それを面倒くさいと思う時もあるが、心配してくれると思うと悪い気はしないし、いつまでも頼っていたいというのが本心である。

実家の居心地は最高だ。

大学教授の父と専業主婦の母。一人娘の私は、蝶よ花よと育てられた。家を居心地良く清潔に保ち、おいしい食事を用意してくれる穏やかな母。実家を離れるなら、これくらいの暮らしを保証できる収入の人がいい。

それはつまり、父のような人だ。経済的に安定していて、年収は1,000万以上。優しく穏やかで、細かい事には文句を言わない人。休みがきちんとあり、出来たら早めに家に帰って来てくれる人。できれば長男は避けたい。

これって、そんなに厳しい条件なのだろうか。

母の考え方に影響され過ぎているのはわかっている。でも、一番私のことを分かってくれているのは母なのだから、きっと間違っていないのだ、と自分に言い聞かせている。

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