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  • 10年越しの恋 Vol.1

    10年越しの恋〜真理亜Ver.〜:元カレとの再会で蘇る甘い記憶。素直になれない32歳女の決心

    いつからだろう。現実を生きる私たちが、夢を見なくなったのは。

    どれだけ努力したって、叶わないことはある。
    理不尽な力に、抗えないときだってある。

    多くの人は、そう自分に言い聞かせ、今を生きることで必死になってしまうのだ。

    アパレル企業で働く真理亜(32)も、かつては大きな野望を抱いていた女のひとり。10年という歳月とともに、すっかり夢を忘れてしまった真理亜だが、あるとき彼女に小さなキッカケが訪れるー。

    慣れきった日常から一歩を踏み出すのは、今なのかもしれない。憧れの夢をつかむチャンスは、みんなに平等なんだから。


    「はぁ…」

    デザイナーとの打ち合わせを終えた真理亜は、小さく息を吐いた。

    華やかな雰囲気のオフィス内では、皆が忙しそうに仕事に没頭している。真理亜の小さなため息など、誰にも聞こえていないだろう。

    真理亜は、アパレル企業で働く32歳だ。数年前からは、人気ブランドのマネージャーを務めている。

    そんな彼女が憂鬱な理由。それは、打ち合わせでデザイナーと揉めてしまったことが原因だ。

    『あなたはデザインというものを、まるで理解していない…!』

    色彩溢れる華やかなオフィスの中で投げつけられたその言葉が、真理亜の心にモノクロの影を落としている。

    デザイナーのこだわりを常に尊重してあげたいのは山々だが、ブランドマネージャーとしてはコストを管理するのも重要な仕事である。予算を重視する真理亜の態度が、アーティスト気質のデザイナーを怒らせてしまったのだ。

    こうしたいざこざは日常茶飯事で、真理亜はデザイナーの気性の荒さにも慣れつつあったが、今日だけは軽く流せそうになかった。

    —私だって本当は、デザイナーになりたかったのになあ…。

    就職前はジュエリーデザイナーを目指していたが、チャンスを掴めず、真理亜がこの会社に総合職として入社してから10年以上が経つ。かつて抱いていた夢も今ではほとんど忘れかけ、売上を重視しつつコストを管理する現実に追われていた。

    デザイナーの辛辣な言葉に、自分自身を否定されたようで、真理亜は肩を落とす。

    時計を見るともう5時だ。気分は晴れないままだが、今日は最後に新しい雑誌広告の打ち合わせで、広告代理店とのアポがあるのだった。

    重い心と足取りで会議室に入る。

    「あっ…!」

    そこに現れた営業マンの顔を見て、真理亜は息を飲んだ。

    昔大好きだった元カレが、同じように驚いた顔をして立ち尽くしていたのだ。

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