―くそぅ...。吾郎のヤツ、羨ましいぜ...。
“男は30代半ばを過ぎると急に子どもが欲しくなる”というのは、どうやら本当であるらしいと松田は思う。
嫁の春子とは、結婚して丸3年が過ぎた。子どもはそのうち...などと思っていたが、最近妙な焦りを感じるのだ。
だが、この焦りの何よりの原因は、あの吾郎に先を越されたことに他ならない。
奴は昔からやたらと「常識、世間、普通」というモノに斜め目線で食ってかかる偏屈野郎であったから、まさか自分より早く嫁を妊娠させるなど思ってもいなかったのだ。
しかもその嫁は、商社勤めの超・可愛子ちゃんだともっぱらの噂である。
—ったく、やっぱりイケメンは得だぜ...。
松田はオフィスの自席から、まじまじと恨めしい視線を吾郎へ送り続ける。するとその気配に気づいたのか、吾郎が不機嫌そうな顔でキッと振り返った。
慌てて笑顔を作ったが、吾郎は苛立った様子で近づいてくる。
「何だよ、さっきからジロジロ見やがって。気持ち悪いんだよ」
イケメンの眼光というのは、なぜこれほどの力を持つのだろうか。松田は蛇に睨まれたカエルの如く、ヘラヘラと取り繕う。
「い、いや...。ランチでも一緒にどうかと思ってただけだよ...」
しかし、吾郎の手にある書物が目に入ると、またしても松田は心の奥がザワついた。
—コイツ、もう育児書なんか読んでやがるのか...!?
ポンコツ嫁の改造計画
―オレも、そろそろ子どもが欲しいぜ...。
松田優一(通称:松田大先生)36歳は、最近こんな野望を密かに抱いている。
ポンコツ嫁・春子の尻に敷かれ、さらに結婚や子作りに否定的だった偏屈男・吾郎にまで先を越され、焦りまくりなのだ。
明るい家族計画を実現すべく、ポンコツ嫁の改造計画を目論むが...!?
東カレ史上、最も“夫にしたい男”と讃えられた松田大先生。その奮闘ぶりを、じっくり観察してみよう。
この記事へのコメント
もはや心理的DV?レベルで引いてます。