SPECIAL TALK Vol.46

~消費者が求めていることに耳を傾ければヒット商品は必ず生まれる~

2020年のニューリーダーに告ぐ

園芸用品からペット用品、LED照明から炊飯器まで、生活を快適にする商品を絶えず生み出しているアイリスオーヤマ。

19歳で大阪の小さな町工場を引き継いだ現会長の大山健太郎氏は、新しい発想でヒット商品を次々に送り出すも、破綻寸前まで追い込まれた経営危機に直面。たどり着いたのは、消費者の不便をとことん解消するという「ユーザーイン」のものづくりだった。

常に新たな市場を切り拓きながら一代で大企業に育て上げた大山氏が、その成長の軌跡を語り尽くす。

大山健太郎氏

1945年大阪府生まれ。64年大山ブロー工業所代表者に就任。91年アイリスオーヤマに社名変更。仙台経済同友会代表幹事、日本ニュービジネス協議会連合会副会長、東北経済連合会副会長、東北大学総長顧問、復興庁復興推進委員会委員を務める。2018年7月にアイリスオーヤマ社長職を息子である大山晃弘氏に引き継ぎ、自身は会長職に就任した。

金丸:本日はアイリスオーヤマの大山健太郎会長にお越しいただきました。お忙しいところ、ありがとうございます。

大山:こちらこそお招きいただき光栄です。

金丸:今日の対談の舞台は、東京ミッドタウンにあります『宮川町 水簾』です。四季折々の食材に繊細な仕事が加えられた京料理をお楽しみいただけたらと思います。

大山:金丸さんとふたりでお話しするのは初めてですね。

金丸:そうですね。とても楽しみです。気づいたら、わが家には「これもそうだったの!?」というくらい、アイリスオーヤマの製品がたくさんあります。今日は大山さんがいかにして、アイリスオーヤマを町工場から大企業に育て上げたのか、その軌跡を存分に伺いたいと思います。

大山:よろしくお願いします。

金丸:早速ですが、お生まれは関西ですよね。

大山:大阪です。南河内郡の藤井寺。いまだに大阪弁が抜けません。

金丸:お父様も関西の方ですか?

大山:父は韓国生まれで、子どものときに日本に来て、「大山ブロー工業所」というプラスチックの下請け工場を始めました。

金丸:どんなお子さんだったんですか?

大山:身長が大きかったものだから、番長ではないけれど目立つ存在で、同級生のほとんどが僕のことを知っていました。

金丸:大山さんは大家族だとか?

大山:女3人、男5人の8人きょうだいです。上に姉がいて、僕は2番目。でも長男なので弟や妹たちの面倒をみて、きょうだいの中では番長をやってました。

金丸:ご飯のときなんて大騒ぎだったんじゃないですか(笑)。

大山:にぎやかでしたよ。ひとつの鍋をみんなで分け合って。

金丸:家族が多いと、分け合う、助け合う、競争するなど、すべてを学ぶことができます。大山さんのリーダーシップは、家庭環境で鍛えられたのでしょうね。

中学では卓球で地区優勝。高校では一転、映画に夢中に

金丸:小学校は地元の学校ですか?

大山:はい。小学校は自宅の横、中学校は向かいにありました。だから中学時代は、始業ベルが鳴ってから家を出ていました。それでも授業に間に合うので(笑)。

金丸:勉強は得意でしたか?

大山:クラスでトップではないけど、2、3番くらいでしたね。家はにぎやかすぎて勉強ができる環境じゃありませんでした。でも、それがかえってよかった。学校では必死になって授業を聞いていました。

金丸:スポーツも得意だったんですか?

大山:中学1年の3学期に「部員が3人しかいないから手伝って」と言われて、卓球部に入ったんですが、背が高くて、手足が長いものだから、1年後には東大阪の大会で優勝してしまいました。

金丸:それはすごい。

大山:そしたら、4人しかいなかった部員が一気に50人ぐらいに増えまして。うちはスポーツで目立つ学校ではなかったので、一番になったということで校長先生にも表彰してもらい、みんなの憧れのクラブに。

金丸:すばらしいですね。卓球は高校でも続けたのですか?

大山:いいえ。インターハイに出るような高校だったので誘われたんですが、「僕は大学受験を目指すので、高校ではスポーツはやりません」と、生意気にも断りました。その頃には、夜になれば静かに勉強できるようになっていましたし、それに父から「大学に行け」と常に言われていました。父は結婚後も早稲田大学に聴講生として通うくらい、向学心のある人でしたから。

金丸:お父様も大学進学を望んでいたんですね。

大山:とはいえ、高校時代は勉強一筋というわけじゃなくて、映画に熱中しました。アクションやコメディではなく、考えさせられる映画が好きで、フランスやイタリア、スウェーデンなどいろいろな国のヌーベルバーグと言われる作品をよく観ていましたね。思春期で物事を自分で深く考えようとしていた僕にとって、人の内面をえぐり出すような映画は、非常に感じるところがありました。

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