あなたのこと、好きになってもいいですか?
「ふふ、ふふっ」
翌日の朝、僕は、聞きなれない女の笑い声で目が覚めた。
自宅に女性を連れてきたのは1度や2度ではないし、付き合っていた彼女がしばらく居着いたこともある。
だが、良く知らない女の笑い声で目覚めたのは初めてだった。
頭がガンガンと痛む。この痛みを感じるたびに、2度と飲みすぎるのはやめようと思うのに…。
僕はやっとの思いで隣にいるひとみに声をかける。
「ごめん、頭痛くて…いろいろなんか、ごめんね、俺とりあえずシャワー入るわ。ひとみちゃん…も、好きにしてて。」
ひとみはにっこりと笑っていた。
熱いシャワーを浴びているうちに、頭がだんだんと覚醒してくる。
次第に記憶が蘇ってきた。
2人で手を繋いで、僕の自宅にやってきたこと。
あの銀座の店でギリギリまで飲んで、2軒目も行かずに2人でタクシーに乗り込んだ。ひとみの白いシャツワンピースに、清楚な雰囲気。艶々の黒髪。彼女が勤めているという企業、そして、年齢…。
全てを思い出して、浴室を出た。
彼女は一晩の関係で終わるには、もったいなさすぎる相手だ。僕はベッドで待っていたひとみに丁重に声をかける。
「ひとみちゃんも、シャワー入る?今日仕事だよね、時間平気かな?あ、お腹空いてる?」
矢継ぎ早に質問する僕のことをじっと見つめたかと思うと、ひとみは、あの大きな目を見開いて、僕のそばにすっと近づいてきた。
「あなたのこと…好きになってもいいですか?」
下着姿をシーツで覆うように隠すひとみに上目遣いに見つめられて、僕は理性を失った。
ひとみを再びベッドに連れてゆき、胸元に、首筋にキスを重ねながらつぶやく。
「僕も好きだ」
「何も心配することないよ」
「こんな可愛い子に会ったのは、初めてだよ…」
この時もまだ、僕は何も気がついていなかった。
だが、彼女と別れてから3時間後。
僕はようやく、ほんのすこしの危機感を抱くことになる。
仕事を終えて、ふと眺めたLINEのアイコンに…
『66』という数字が表示されていたからだ。
66件のうち、62件はひとみからのメッセージだった。
▶NEXT:7月27日 金曜更新予定
ユウキの生活に突然現れたひとみ。彼女は一体何者なのか―?
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この記事へのコメント
毎日暑いのでヒヤッとさせてください。