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  • ネブミ男 Vol.13

    ネブミ男 特別番外編:“怖い女”は数千万円損をする!?良いことなしの“メデューサ女”の実態

    「私、シャンパン飲もう〜っと」

    愛美は『六本木うかい亭』のカウンター席で、一人でグビグビとシャンパンを飲み始めた。

    「愛美ちゃんってよく飲むし明るいし、モテるでしょ?」

    「そんなそんな。龍平さんはどうなんですか?カッコ良くて優しくて、稼ぎもあって...モテモテですよね?」

    「いや、僕はもうただの拗らせなんで...」

    そんな拗らせネブミ男・龍平の話も適度に聞きつつ、“アハハ”と大口を開けて笑ってくれる。

    そうかと思えば不意に真面目な顔になって真剣な話をしたりと、喜怒哀楽がハッキリしており、愛美は一緒にご飯を食べていて楽しい女性だ。

    「あ〜もうこのお肉最高!本っ当に美味しい!」

    そう言って満面の笑みで「うかい極上牛(田村牛)」を食す愛美。こんなに美味しそうに食べてもらえるならば、連れてきた甲斐もある。


    「愛美ちゃんって美味しそうに食べるよね」

    龍平が微笑ましく彼女を見ている時だった。不意に愛美が真剣な顔をして、龍平にスッと顔を近づけてきた。

    「で?もう本題に入ってもいいですよね?」

    「え、あ、はい…」

    その気迫に押され、思わず龍平はタジタジになる。

    ー何だろう、この圧…。

    愛美の鋭い視線を受けて龍平は、蛇に睨まれた蛙の気持ちが、分かった気がした。

    「私がバチェラーの小柳津さんに選ばれなかった理由、早く教えて下さい」

    「何だろうね...たまたま小柳津さんと合わなかっただけ、とか?」

    迷っているフリをしながらも、すでに龍平は分かり始めていた。愛美が最後まで選ばれなかった理由が。

    しかしストレートに言うと怒られそうで、少々様子を伺いつつ歩み寄ってみる。

    「愛美ちゃん自身は、どうして選ばれなかったと思う?」

    目の前のカウンター席で、肉がジュウジュウと音を立てて焼けている。静かな沈黙が流れる中、龍平は重い口を開いた。

    「愛美ちゃん、沖縄での出来事を覚えてる?」

    スタイル抜群の愛美は、沖縄でその美貌とスタイルを存分に活かし、積極的に自らアプローチしていた。

    「もちろん!沖縄は色々ありましたから...でもそこで何?早く言ってくださいよ」

    グイっと迫ってくる愛美に、龍平は思わず後ずさりをする。彼女が選ばれなかった理由。

    それは、この気迫に他ならない。

    「は…?気迫って何ですか?」

    愛美は、とても真面目でピュアな女性だと思う。何事にも一生懸命で、常に全力投球。

    裏表もなく、計算高くもない。

    第4話の沖縄にてビーチフラッグのシーンで1番になった様子を見るだけで、彼女がどれほど真っ直ぐなのかが伝わってくる。

    砂浜で、全力疾走で旗に向かって一心不乱に走る姿は愛美の性格をよく表しているだろう。

    しかし時として、そのひたむきさは仇となる。

    いくら小柳津さんが結婚相手を探しに来ているとしても、そしてまわりがライバルだらけだとしても、女がグイグイ攻めると、男性は確実に引く。

    恋愛は、緩急が重要だ。押して、引いて、引いてるように見せて押す。

    少々計算高い女であれば、これを器用にやってのけるのだが、愛美の場合はこのひたむきでド直球な性格が災いしたのだろう。

    本来であれば、こういう子にこそ幸せになってほしいのに…と、龍平は複雑な気持ちになる。

    だが愛美のネブまれたポイントがこれだけであれば、まだ結果は違っていたかもしれない。

    彼女のこの気迫が次第にエスカレートしてしまい、“ある姿”になってしまったことが、決定打になったのだろうと龍平は考えている。

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