―私、もしかして...?ー
結婚相談所に助けられながら、気が遠くなるほど壮絶な婚活を経て、晴れて結婚ゴールインを果たした女・杏子。
一風変わったファットで温和な夫・松本タケシ(マツタケ)と平和な結婚生活を送り、はや2年。
34歳になった彼女は、キャリアも美貌もさらに磨きがかかり、順風満帆な人生を歩む一方、心の隅に不妊の不安を抱えていた。
これは、女子会マウンティングにもめげず、辛い不妊治療に励む杏子を見守る、由香のエピソードである。
ーゆかさん、やっぱりもう一度、きちんと話せませんか?ー
何度もしつこいLINEと着信を目にすると、つい大きな溜息が出た。
結婚してもなお、ベッドの中以外では私を“さん”付けで呼ぶ年下の夫。そんな彼の律儀さを昔は愛しく思ったこともあったが、今となっては神経をピリッと刺激されるだけだ。
結局、カオルくんはただの猫かぶりで、その辺にゴロゴロいる浮ついた男たちと中身はそう変わらなかったのだから。
—実(みのる)くんが起きるから、夜に無駄に電話を鳴らすのはやめてください。そんなことも分からないんですねー
たかがLINEにいちいち反応するのも馬鹿らしかったが、二人で暮らした広尾のマンションの一室から一人で電話をかけているだろうカオルくんの姿を想像すると、彼をほんの少しでも傷つけてやりたくなった。
実家の母に完全に頼りきっているとはいえ、初めての育児でストレスが溜まり、私は心が歪んでいるのだ。
誤解はされたくないのだが、生まれてきた息子は信じられないほど可愛かったし、こんな私にも母性が溢れることには感動もした。
......だが正直、元々それほど子どもが欲しかったわけではなく、世間の母親が声高に訴えるように、子育ては物凄く大変なのだ。
そして、その疲労が形を変え、年下の浮気夫への強い恨みになるのは、もはや当然のことのように思っていた。
この記事へのコメント
杏子さんが幸せになって欲しいのはもちろんですが、由香さんも旦那さまと傷を乗り越えて、幸せになって欲しいな。
子育ての時、夫は察しては絶対無理なので、やって欲しいことは由香さんお得意の可愛く「...続きを見るお願い」で、きっといいイクメンに育ちます(笑)