愛しのドS妻 Vol.1

愛しのドS妻:深夜の修羅場…ドS妻の追及に思わず吐いた、男の苦しすぎる言い訳

咄嗟の言い訳


事業が軌道に乗ったタイミングで引っ越した、青山1丁目のタワーマンション40階。

遠くに赤坂のタワマンがあるだけで、同じ目線には一切遮るものがない。

華を直視できない貴裕は、夜景を眺めるふりをして、自身の軽率な行動を痛切に悔いた。しかし、バレてしまってはもう遅い。

「この奈美子って女に、今すぐ電話してください」

冷たい華の声には震え上がるほどの圧があり、敬語だし依頼形だが命令にしか聞こえない。

「いや待って。華は誤解してるよ。それに電話なんて無理だ…今、何時だと思って…」

「は?相手は不倫するような非常識なバカ女なのよ?なんで被害者であるこっちが常識わきまえなきゃいけないわけ」

怒りMAXの華は、貴裕の言葉など聞いちゃいない。

それに否定や反論は、もはや火に油を注ぐだけだ。

「早く。あなたができないなら番号を教えなさい。私はこの奈美子って女に、慰謝料請求する権利があるの」

「ねえ、早く。教えなさいよ!」

普段はにこやかな笑みを絶やさないのに、こうと決めたら頑として譲らない彼女の芯の強さは、出会った頃から変わらない。

さらに華は貴裕と結婚し、妻として夫の独立を支援、そして事業が軌道に乗るよう尽力してきた経験を経て、その腹の据わり方はますますパワーアップしていた。

敵対心に満ちた、華の瞳。

貴裕は、彼女を説き伏せるなどもはや無理だと悟る。

しかしどうにかして、この場を切り抜けなければ…。

「…奈美子は、もうこの世にいないんだ」

それは、咄嗟に口から出た言葉だった。

自分でも無理があると思いつつ、言ってしまったからにはもう引き返すことなどできない。

貴裕は慌てて神妙な面持ちを取り繕い、ひたすら静かにやり過ごす。

「…あなたって、本当にバカね」

しばしの沈黙の後、華は呆れた表情で大きく息を吐いた。

「だけど今の言葉で、その奈美子って女が私の敵じゃないことはよーくわかった。

言っておくけど、万が一にも奈美子がこの世に存在していることがわかったら...その時は、タダじゃおかないから」

華は含みをもたせてそう言うと、別々に寝るつもりなのだろう、寝室を出て別室へと消えていってしまった。


▶NEXT:5月27日 日曜更新予定
キレたドS妻の反撃、開始。ふたりの関係は、このまま破滅へと向かうのか?

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

この記事へのコメント

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No Name
この世にいないっていう返事に軽くウケた。勝手に殺すなよ(笑)
2018/05/20 05:3499+返信11件
No Name
1話目だけだと、ドS妻って言うより、
誰だってキレて当たり前の内容だってばww
私だって浮気の証拠見付けたら夜中だろうとキレるわ‼
2018/05/20 07:0999+返信5件
No Name
(わたしは、浮気反対派ですが)
妻以外からもらった封筒を保管しておく
なんて。。
考えられないです!!!
2018/05/20 05:2699+返信3件
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