2018.03.20
SPECIAL TALK Vol.42久々の日本帰国で、日本の面白さを発見
金丸:大学卒業後、ずっと過ごしたアメリカを離れ日本に戻ることにしたのは、なぜですか?
渋澤:大学4年生のとき、友達と一緒に日本を旅行したのが大きかったですね。日本のことは東京しか知らなかったけど、広島や山形を旅して、「日本って面白い国だな」と感じました。食べ物は美味しいし、山を越えると言葉も違う。それまで日本で暮らすなんてまったく思っていなかったんですが、住んでみようかなと。それでフラッと戻ってきたんです。
金丸:フラッとですか(笑)。就職はどうしたのですか?
渋澤:フリーター気分だったのですが、さすがに何もしないわけにはいかないので、叔父が立ち上げた財団法人日本国際交流センターという外交のシンクタンクに勤めることにしました。ただ、アメリカ生活が長かったので、最初は日本語で苦労しましたね。
金丸:アメリカでは、ご両親と日本語で話していなかったんですか?
渋澤:親が日本語で話しかけても私は英語で返してて、日本語は全然使っていませんでした。向こうでは『少年ジャンプ』や『少年マガジン』を読んでいたので、日本語のリーディングはなんとかなりましたが、話すのが大変で。書くのはもう全然だめでした。
日本で働くために外資系企業を選択
金丸:そこからどのような経緯で、金融機関に勤めるようになったのですか?
渋澤:国際交流センターは親類の組織ということもあり、ずっと勤めるつもりはありませんでした。でもどうしても日本で働きたくて、日本の企業を何社か受けてみたんですが、なかなかうまくいかず。
金丸:そうなんですか? 英語も完璧に話せるのに。
渋澤:私が〝変な日本人〞だったからでしょうね。この通り、顔は日本人だけれども、服装やボディランゲージはアメリカ仕様。浮いていたんだと思います。ある商社の面接で「いやあ、渋澤さんは現地法人が合いそうだ」と言われたりしましたよ(笑)。
金丸:日本で働きたいのにね(笑)。
渋澤:それでいろいろ考えた結果、外資系の金融機関に絞ったんです。当時、外資系企業は日本で働く人を増やそうと、MBAを持つ日本人を積極的に採用していたので、逆に日本で仕事ができるはずだと。そのためにMBAも取得して。
金丸:そのためにMBAを。それにしても、外資系が日本のマーケットを重視していたとは、時代を感じますね。
渋澤:1980年代半ばという、日本経済が一番元気な時代でしたからね。面白かったのは、外資系に就職して数年後にある雑誌を見ていたら、先ほどの商社の人事担当者が、「われわれは国際化のために、積極的に多様な人材を採用します」とインタビューで答えていて。何を今さら、と思いました(笑)。
金丸:たしかに(笑)。しかし、日本企業が語る多様性って、少しおかしいと思いませんか? 女性や外国人を役員に登用すれば、それだけでダイバーシティが担保されているかのように錯覚している。
渋澤:ダイバーシティの重要性は、経営トップは理解していて、変えなきゃいけないという意識も高いし、現場は現場でその必要性を肌で感じています。でもなかなか改革が進まないのはなぜか、誰が抵抗しているのかというと、私はバブル入社組がネックになっているんじゃないかと思うんです。
金丸:それはなぜですか?
渋澤:まず絶対数が多いじゃないですか。もうちょっと我慢すれば、部長とか執行役員になれる人がずらーっといる。つまり企業が新しいことをやろうとしたときに、割を食うと感じる人たちが結構いる、ということなんです。あと10年くらいで、彼らが定年を迎えれば、自然と組織はすっきりするはずですが、金丸さんはどうお考えですか?
金丸:私もさまざまな企業の方と接していて感じるのは、中堅幹部が保守的だということです。今は株主の力が大きいので、経営層は外圧を受けます。しかし中堅幹部には、その外圧は及ばず、既得権益化してしまっている。バブル入社組の中には、いまだにあの頃を懐かしむ人がいますよね。でもあの繁栄は、自分たちの努力で得たものではなく、単に風に乗って浮かれていただけという自覚はありません。
渋澤:あの当時、「日本は豊かだ、豊かだ」と言われていましたが、今考えると、違和感があります。とにかくいろいろと急がされていただけで、本当に豊かだったかなと。
金丸:そうですよ。そもそもあれは間違った風だった。いいかげん、きれいさっぱり忘れるべきです。
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