多くの女性を苦しめる、 “結婚”という二文字。
高望みをしているわけではない、普通の幸せが欲しいだけ。しかし出会いに溢れているはずの東京で、それはなかなか手に入らないのである。
自称・丸の内にゃんにゃんOLの本田咲良(27)も、そのうちの一人。
しかしある日、ひょんなことからビジネススクールに通うことに。
しぶしぶ行ったビジネススクールだったが、そこには意外にも婚活にぴったりな世界が待っていた…!?
「…というわけで、来期は課長代理として名前が挙がってるから、週明けから、これに行ってほしいんだよね」
「え……?」
3月初旬に行われる、半年に一度の人事面談。
上司がタブレットの画面に出してきたのは、ビジネススクールのサイトである。咲良は、思わず耳を疑った。
―課長代理……!?まさか私が、昇進するの??
咲良はこの専門商社に一般職として入り、これまで自分は、いわゆる“にゃんにゃんOL”だと思っていたのだ―。
◆
その夜、お風呂上がりにSK-Ⅱのシートマスクをしながら、ぼんやりと考えていた。
「まぁまぁ。そんなに難しく考えないでいいよ」
上司である海老原はにこにこしながら、抵抗を示す咲良をなだめようとしていた。
海老原は穏やかでいい上司なのだが、能天気過ぎるところがある。年齢は50代半ばで、娘は咲良と同じくらいの年らしい。まるで反抗期の娘をなだめるようだ。
「……海老原さん。ビジネススクールに通うなんて、私無理です!大学だって経営学部とかじゃないし。女子大の、しかも文学部ですよ?」
「まぁ僕も行ったけどさ、そんな難しいもんじゃないよ?部長も期待してるって言ってたし。本田ならできるって!」
「………」
海老原は部長の手前、絶対断らせないつもりなのだろう。その一歩も引かない雰囲気に、結局最後は「わかりました」と言わざるを得なかった。
そのやりとりを思い出し、大きく溜息をついていると、同期の由利からLINEがきた。
―咲良も研修行くんだって?見学会一緒に行って、その後ご飯行こうよ!
同期の由利が、大阪から本社に戻ってくることは噂で聞いていた。総合職の彼女は、男性社員並み、いやそれ以上に仕事をバリバリこなしているらしい。大阪に転勤するまでは、職種を越えてよく食事に行く仲だった。
―あーぁ……。由利と同じ研修なんて、ついていけるのかな?
由利のLINEには「もちろん」と返信したが、内心はかなりブルーだった。
この記事へのコメント
祐一、いい人そうなのに、タイトルからすると、これから婚活はじまるのか!次回から楽しみです。
なんでもキッカケが大事だから。