2018.03.05
婚活は、ビジネススクールで!? Vol.1咲良は一般職としてこの会社に入り、丸5年が経つ。
数年前、給与テーブルに差はあるものの「一般職」という概念はなくなり、咲良も転勤のない総合職という扱いになった。
しかし仕組みが変わったところで、人の意識というものはなかなか変わらない。
営業部の男性たちは一般職として仕事を振ってくるし、定時に帰りたい咲良としても、そちらのほうが断然有難かった。
…ただたしかに、ここ最近任せられる仕事が格段に増えていることには、薄々気づいていた。
一般職の給与なんてたがが知れているのだから、絶対定時に帰りたい。その信念(?)ゆえ、必ず納期より早く仕事を仕上げる咲良は、営業部でかなり重宝されている。
そのうえ一般職としてはベテランの域に入っており、何か間違いを見つけたら、例え相手が部長であろうと物怖じせず発言してきた。しかしそれは“一般職”という身分で、しかも出世なんてまるで興味がなかったからこそ、できたことである。
実際、一般職として入った大半の女性たちは、最終的にはキャリアより家庭を優先する。一般職出身の女性役員が1人いるが、彼女は50代で未だ独身。きつい性格で、いわゆる昔のキャリアウーマンタイプの女性である。
大先輩に失礼かもしれないが、彼女のようには決してなりたくない。咲良はいまのポジションで、充分満足しているのだ。
それに27歳のいまは、出世するより結婚したい気持ちの方が断然強い。半年前に彼氏と別れて以来、これという人に出会えず焦っていた。
―出世より、まず結婚したいなぁ……。
そんなことをぼんやりと考えていると、母親から電話があった。
「もしもし、咲良ちゃん?」
咲良の実家は碑文谷にあり、祖父の代から不動産事業を営んでいる資産家である(いま咲良が住んでいる広尾のマンションも、その一つだ)。
バブル期に事業を広げたことで経営が傾き、その後持ち直したものの、母親は未だそのときの辛い記憶を引きずっていた。咲良は20歳を過ぎた頃からずっと「絶対ちゃんとした結婚相手を見つけなきゃダメ」と、呪文のように言われ続けてきたのだ。
そして心配性の母親がこのたび、見合い話を持ち込んできたのである。明日はその顔合わせがあるため、連絡を寄越してきたのだろう。
「咲良ちゃんにぴったりな人を探してもらったんだから、明日は絶対頑張るのよ。お洋服は、もう決まっているの?ママが見てあげようか?」
「うん、うん……。大丈夫だから。分かったって」
その他にも、ハンカチを忘れないようにとか、大口を開けて笑っちゃダメとか、散々母親からの注意事項を聞いたあと、咲良はやれやれと電話を切った。
―明日はお見合い、来週はビジネススクールか……。
いままでのほほんと平和にOLをしていたはずの自分の人生が、大きく動きだすような気がしていた。
◆
お見合い、当日。
いつもより薄めの化粧を施し、今日のために買ったクロエのワンピースを着て、全身鏡で自分の姿をまじまじと見つめた。
きゅっと引き締まったウエストから広がる裾はフレアになっていて、ほっそりした咲良のスタイルを際立たせている。さらに上品にカッティングされた丸襟から覗くデコルテは、色白の肌を美しく強調し、今日の咲良は満点に近い仕上がりだった。
しかし完璧に決まった自分の姿を見ても、お見合いへのテンションはなかなか上がらなかった。
―やっぱりいまどき、お見合いなんて……。
母親の猛プッシュで仕方なく承諾したものの、直前になって途端に面倒な気持ちになってしまった。
しかし相手の男は祐一と言って、横浜にある開業医の長男らしく、客観的に見れば好条件なのは間違いない。11歳も年上で、見た目がタイプじゃないことを除けば―。
咲良は何とか自分を奮い立たせ、帝国ホテルのロビーに足を踏み入れた。
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