SPECIAL TALK Vol.41

~必要としている人に適切な情報を届けていきたい~

娯楽だけではない。動画の秘める可能性

金丸:その後、2013年にグーグル日本法人の執行役員、2017年にはYouTubeの日本代表に就任されています。私もYouTubeのヘビーユーザーで、筋トレのやり方を教えてくれる動画をよく見ています。上腕三角筋とか上腕二頭筋とか(笑)。

仲條:ありがとうございます(笑)。YouTubeは本当に人それぞれ使い方があって、ニッチでロングテールなニーズも含めて、幅広いコンテンツを提供していきたいと考えています。私が子どもの頃は「こういう情報がほしい」と思っても、なかなか得られませんでしたから、情報を探している人に欲しい情報がきちんと届くようにすることで、その方々にとっても正しい選択へつなげるようにしていきたいです。

金丸:グーグルもYouTubeも、世界中の情報を集めてアクセスしやすいようにすることを使命としていますからね。それに最近の若い人たちは、テレビよりもインターネット、とくにYouTubeの視聴時間が長いそうですね。

仲條:そうですね。若い世代は情報を探すときに、6〜7割がモバイルで動画を見ています。

金丸:そんなに高いんですか。それだけ動画の重要性が増していると。

仲條:日本でも自分を表現する手段として、動画をアップする人がどんどん増えています。自分の経験やノウハウをたくさんの人に役立ててもらいたいという方が、大勢いらして。

金丸:子どもたちの「なりたい職業ランキング」に、YouTuberがランクインしたときは驚きましたよ。

仲條:でもYouTuberは大変ですよ。名乗るのは簡単ですが、トップクリエイターは本当に一握りしかいません。カメラの前で話すだけじゃなく、演出や編集もするマルチタレントでなければならないし、見る人にとっての価値を出せなければ徹底的に淘汰されていく世界ですし。でも総じて見ると、人の役に立ちたいという思いが強い方の動画は、やっぱり質が高く、多くの共感を得ています。

金丸:YouTubeには、子どもの教育に役立ちそうなコンテンツもたくさんありますよね。日本でも2020年から、小中学校でプログラミング教育が始まりますが、文科省が作る教材よりも、スーパープログラマーの人がどんな勉強をしてプログラミングを身につけたかを教える動画のほうが、子どものためになるかもしれません。

仲條:おっしゃるとおりで、YouTubeには優秀な教材がたくさんあります。たとえば、サルマン・カーンという、オンライン動画教育界の池上彰さんのような方がいるんですが、説明が本当にうまいんです。この方の動画『カーンアカデミー』は、日本語はもちろん何十もの言語に翻訳され、世界中に広まっています。YouTubeの動画が、ほかのどんな教材よりもわかりやすいと思っている子どもは多いはずです。

金丸:日本でも動画を授業に積極的に使うべきです。国語、算数、理科、社会を教えるだけでも現場の先生たちは大変なのに、そこに英語が入ってきて。

仲條:その前にダンスも加わりました。

金丸:そうだ。で、さらにプログラミングですからね。これまでの枠組みの中で新しい教科を増やそうとするのは、もう限界だと思います。教育現場全体を再度デザインする必要があるのに、国にはそういう発想がない。すでにごちゃごちゃ描き込んでいるキャンバスに無理やり描こうとするよりも、白地の真新しいキャンバスに一から描いたほうが、絶対にいい絵になるのに。

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