
~必要としている人に適切な情報を届けていきたい~
2020年のニューリーダーたちに告ぐ
日々、世界中で膨大な動画がアップされ、多くの人が利用するYouTube。
その日本法人の代表、仲條亮子氏は短大卒業後に就職するも早稲田大学に入り直し、シカゴ大学でMBAを取得、さらにはハーバード・ビジネス・スクールで世界のエリートたちに揉まれた経験を持つ。
仕事を続けながらも勉強を続けるのは、高校時代、アメリカでのホームステイで見つけた、人生のテーマを達成させるためだ。ITの進化によって情報格差が解消されつつある現代。
その最前線で活躍する仲條氏の目的意識は、どのようにして育まれたのか。
金丸:本日はお忙しいところ、ありがとうございます。
仲條:こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。
金丸:今日は『六本木テラス フィリップ・ミル』をご用意しました。フランス料理界で注目のシェフ、フィリップ・ミル氏のフランス国外初出店となるお店です。
仲條:今日は天気がよくて、外のテラスも気持ちよさそうですね。
金丸:最初にお会いしたのは、もう10年ほど前ですよね。
仲條:そうですね。私がブルームバーグにいた頃ですから。
金丸:今日は仲條さんの生い立ちから現在に至るまで、じっくり伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
千葉の田舎に生まれ、海外に憧れを抱く
金丸:早速ですが、ご出身はどちらですか?
仲條:平成の大合併でなくなってしまったのですが、千葉県の海上郡海上町というところです。電車は1時間に1本、駅は無人という超ディープな故郷です。ちなみに、その駅は去年アニメ映画が公開された『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』の舞台になった場所です。
金丸:そこは、海のそばにある町ですか?
仲條:はい。父方は祖父の代まで網元でした。父は12人兄弟で。
金丸:12人!? それはまたすごい。
仲條:祖母は末っ子を48歳で産んだそうです。
金丸:お父様はどんな方ですか?
仲條:発想が自由で、クリエイティブな人です。いろいろなものを作るのが大好きで。
金丸:では、お仕事もクリエイティブ系?
仲條:いえ、そういう仕事に就くことが当たり前の時代ではなかったので。きっと今の時代に生まれていたら、クリエイティブ系の仕事をしていたと思います。
金丸:生まれてくる時代って、大きいですよね。それから生まれる場所も。同じ世代でも場所による有利、不利がありますから。
仲條:そうですね。私の故郷も場所の分だけ、情報が届くのが遅くて。だから私にとって、テレビだけが、世の中を知ることができる世界への窓でした。
金丸:海上町にはいつまで住んでいたのですか?
仲條:高校を卒業するまでです。小中高と地元の公立の学校でした。
金丸:子どもの頃はどんな遊びを?
仲條:よく父の遊びに付き合わされていました。あるとき、父が「家にお茶室を作る」と言い出して。うちは上流階級でもなんでもないのに、お茶室みたいな風情が欲しいと(笑)。
金丸:面白いお父様ですね。
仲條:お金はかけられないので、取り壊すことになった近所の300年続いた庄屋さんから材料の竹をもらってきて、それを兄と一緒に一生懸命磨いて(笑)。ヤスリで削ったり、バーナーで焼いたりするうちに、ツルツルの飴色の竹になっていくんですけど、今考えるとかなりハードな作業でしたよ。
金丸:でも、いい経験じゃないですか。最近は物を作る機会って、なかなかないですよね。そういう経験がないと、作るという発想がゼロになってしまう。
仲條:そうですね。子どもの頃の経験があるから、私は今でも洋服やお菓子を作るのが好きで、バレンタインデーやハロウィンのときには、子どもと一緒に衣装を作ったり、クラスの人数分お菓子を作ったりしています。
金丸:買うよりも、明らかに価値がありますよ。
仲條:労働時間を考えれば、効率は悪いんですけどね(笑)。でも作ることの楽しみって、人間誰もが持っていると思います。それに物を作っているときが、頭が一番クリアになるんです。
金丸:手を動かすのが好きなんですね。
仲條:ええ。編み物も好きですし、最近ではピアノも始めました。昔から習いたかったんですけど、ピアノの先生のところへ行くには、長い時間電車に乗らないといけなくて。
金丸:今は先生に教えてもらっているんですか?
仲條:いえ、それこそYouTubeを見ながら(笑)。
金丸:なるほど(笑)。
仲條:YouTubeには、いい教材がたくさんありますから。
金丸:お父様のお手伝い以外では、どんなことをしていましたか?
仲條:テレビを観ては海外にすごく憧れていました。当時はマイケル・ジャクソンと、ドラマ『チャーリーズ・エンジェル』のオリジナル版が大好きで、「どうやったらあの世界に行けるんだろう」とずっと考えていました。いつもいろんなことを夢見ている、妄想力のたくましい子どもでしたよ(笑)。