2018.02.21
SPECIAL TALK Vol.41メディアに就職したことで自分のやりたいことが明確に
金丸:帰国後はどうされたのでしょうか?
仲條:実は留学する前に、家族と「大学に行くか、留学するかのどちらかを選べ」という話をしていて。
金丸:それで、留学を選んだ。
仲條:だから高校3年生で就職試験も受けました。ただ、やっぱり大学に行って、卒業後はメディアで働きたいという気持ちがだんだん大きくなって。
金丸:どうされたんですか?
仲條:当時大学に通っていた兄が、「自分が辞めて働くから、妹を大学に行かせてほしい」と両親に言ってくれました。もちろん親は反対し、それなら2人で働きながら学校に行こうかと。
金丸:いいお兄ちゃんですね。
仲條:本当に。みんなに助けられて生きていると思います。それで立教女学院短期大学に進学しました。当時は短大のほうが就職率がよかったし、テレビ局に入るにも短大だと言われていたので。でも卒業する頃には、アナウンサーの採用も4年制大学卒が主流になっていて。
金丸:狙いが外れてしまった。
仲條:そうなんですよ。結局就職先が見つからず、卒業後、学生の頃からボランティアをしていたユネスコの外郭団体で活動していたときに、テレビ東京が短大卒でも可というアナウンサーの募集をしていて、飛びつきました。
金丸:念願の伝える職業に就くことができたんですね。
仲條:はい。でも仕事をしてみてわかったのは、報道の世界も分業なんですよ。取材して、編集して、最後にアナウンサーが伝える。それぞれの工程で、いろいろな人が関わっている。私はそれを全部一人で携わりたかった。きれいな格好で原稿を読むだけというのは、どうも合わなくて。しかも女性は天気予報とか芸能ネタしかやらせてもらえない。
金丸:硬派なネタは、男性アナウンサーの担当だと。
仲條:それはもしかしたら、私が短大しか出ていないからかなと思い、早稲田大学を受験して、1年生からやり直したんです。おかげで25歳でまた体育をやることに(笑)。
金丸:体育って必修ですからね(笑)。
仲條:でもやっぱり自分でお金を払うと、真剣さが違います。どれぐらいのコストをかけて自分が通っているのかをすごく意識しました。そして1996年、卒業間近にブルームバーグが日本でも放送事業を開始するという話を聞き、取材キャスターになりました。
自分にとって必要なことを、その都度勉強する
金丸:そういえば、ブルームバーグ時代にお子さんがお生まれになったんですよね。
仲條:1人目がそうですね。今は11歳と6歳の男の子がいます。
金丸:子育てをしながら、仕事をずっと続けたのですか?
仲條:ええ。どうすれば仕事と子育てをうまく回せるかを考えて、生活をデザインし直しました。オフィスの近くに引っ越して、保育園もオフィスのそばにして。保育園から「お子さん、おなかがすいてます」と電話がかかってくると、「今から行きまーす」とオフィスを出て授乳し、また仕事に戻るということを一日に何回もやっていました。会議中だとしても、周囲に助けてもらいました(笑)。
金丸:かなり大変そうですね。
仲條:仕事にはメリハリってありますよね。「ここは絶対に抜けられない」という部分と、そうでもない部分がある。私の場合、ある程度経験を積んで、その判断ができるようになったときに子どもが生まれたので、そのあたりはやりやすかったと思います。
金丸:会社も理解はありましたか?
仲條:とても柔軟に対応してくれたので、ありがたかったです。それに子どもが生まれる前、MBAを取得するためにシカゴ大学に留学したんですが、その際のサポートも手厚かったですよ。
金丸:仲條さん、勉強熱心ですね。
仲條:ブルームバーグテレビジョンの日本法人の社長をしていたんですが、いろいろと失敗も経験し、ビジネスのことをちゃんと勉強したいと思いまして。
金丸:その間は休職されたのですか?
仲條:いえ、仕事を続けながらです。正確には「通い」ですね(笑)。
金丸:それはハードだったでしょう。
仲條:卒業までの2年間、過労で2回入院しました(笑)。
金丸:笑いごとじゃないですよ。
仲條:知力より体力って、こういうことなんだなと身をもって知りました。いつでも正しい判断ができるように、常に健康でいることもプロの仕事の一部だと。
金丸:ブルームバーグには何年いらしたのですか?
仲條:13年ほどです。
金丸:何がきっかけで転職されたのですか?
仲條:ブルームバーグは大好きでした。ただ、これだと人生がすべてブルームバーグになってしまうと思ったんです。日本のためになる仕事がしたいと強く思っていましたし、そのためには一度外に出て、ブルームバーグとは違うやり方を知りたいと、また勉強することにしたんです。
金丸:さらに勉強ですか!? 今度はどちらに?
仲條:ハーバード・ビジネス・スクールのアドバンスド・マネジメント・プログラムです。2ヵ月のプログラムに世界中から集まってくるんですが、60年の歴史の中で日本人の女性は、私が3人目でした。そのとき一緒に学んだ人たちとは、今でもつながっています。ネットワークが一気に広がりましたね。
金丸:仲條さんの向上心は、素晴らしいですよね。自分に何が欠けているのか、何が必要なのかを考えられる人はいますが、その足りない部分を補うために、思い切って外の世界へ飛び込める人は、そうはいません。
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