人事部は見た! Vol.7

人事部は見た!:内部分裂の危機に、ヤリ手ベンチャー社長が人事部に放った一言とは

人事部ー。

社内の人間模様や、人間の黒い欲望に直接触れることもある部署。

人事部から見た社内、それは人の業が蠢く社会の縮図であった。

涼子が働く恵比寿のベンチャー企業では、管理本部長・坂上の社内システム入れ替えのミスを、総務課長・後藤になすり付ける、黒い思惑にまみれた人事異動が発表された。

後藤も、坂上の保身のための人事異動と気付いているが、坂上からの黒い計画に翻弄され、抗う事が許されない事態に陥っており、涼子の上司である人事部長の大竹に後藤を助けたいと相談するも、「余計なことはするな」と一蹴され落ち込む。

涼子は自分に何ができるかと悩み、誠に相談する


「今日の呼び出し、仕事の話だったなんて、ちょっと残念だな。」

誠の真剣なまなざしが、涼子を捉えて離さない。


-え?それって…?


涼子が混乱し、何も言えずにいると、誠はお腹を抱えて笑い出した。

「なーんてな、何動揺してんだよ。チョット格好つけてみた。」

誠が可笑しそうに笑うので、涼子もつられて笑う。

「何よ、ビックリしたじゃない…!でも、ありがと。もう少し頑張れそう。」

「おう。何かあれば、頼れよな。応援してるから。」



食事を終えて誠と一緒に店を出ると、外の空気は随分と冷え込んでいた。

「今日はこの辺で。じゃあまた会社で!」

颯爽とタクシーに乗り込む誠を見送り、涼子は酔い覚ましに少し歩くことにして、さっきの誠との会話を振り返る。

-もし、さっきの“残念だった”が冗談じゃなかったら、私はどうしてただろう。

誠とは同期として特に仲良くしており、一緒にいても全く苦ではなく、むしろ楽しいと感じている。

ただ、今までそういう目で見たことはなかったし、社内恋愛をこじらせて面倒な事態になっている人を何人も見てきた。そのせいもあって、社内恋愛なんてするものかと思っていた。

人事で社内恋愛なんてすると、贔屓しているなどのいらぬやっかみも言われるだろう。

それに、せっかく信頼できる仲間ができたと思っているところに、恋愛感情の縺れが発生したせいで、気まずくなるのが一番困る。

ー後藤さんの言う通り、仲間ってありがたいなって感じたところなのに。

そう思うと、誠の言葉が冗談で本当に良かったと改めて感じる。

-そんなことより…ぐずぐずなんてしていられない。作戦を練らなくちゃ。

涼子は夜の街に白い息を思いっきり吐き、逸る気持ちを抑え、向かってきたタクシーを停めるべく右手を上げた。

【人事部は見た!】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo