人事部は見た! Vol.4

人事部は見た!:会社員としての正しさとは何か?悔しさに視界が歪んだ打ち合わせ

人事部ー。

社内の人間模様や、人間の黒い欲望に直接触れることもある部署。

人事部から見た社内、それは人の業が蠢く社会の縮図であった。


涼子が働く恵比寿のベンチャー企業では、管理本部長・坂上の社内システム入れ替えのミスを、総務課長・後藤になすり付ける、黒い思惑にまみれた人事異動が発表された。

後藤も、坂上の保身のための人事異動と気付いているが、坂上からの黒い計画に翻弄され、抗う事が許されない事態に陥っていた。


「何もできず…力不足です、申し訳ございません。」

会議室から出る際に、涼子は後藤さんに向かって頭を下げた。

結局後藤さんとの打ち合わせでは、総務の状況は聞けたものの解決策は出ず、お開きとなった。

「高橋さん、頭を上げて下さい。何もしなくて大丈夫と、私がお願いしたんです。むしろ私がお礼を言わないと。」

後藤さんはいつもの困り顔で、優しく微笑んだ。

「高橋さんは先に戻っててください。私はちょっと、水やりをしてから戻ります。」

そう言った後藤さんの視線の先には、観葉植物がある。だがこれは、後藤さんと涼子が席に戻るタイミングをずらすための気配りだろう。

涼子は「はい」と頷くしかできず、にっこりと微笑む後藤さんを残し、一足先に自席に戻った。

人事部みんなの目が、何かすることありませんか?と訴えかけていることを感じて、涼子は本当にいいメンバーに恵まれた、と思わず泣きそうになった。

「総務部、もうすぐ落ち着くから大丈夫だって。みんな、ありがとうね。」

「承知しました、また何かあったら言って下さい!」

キラキラした笑顔で返してくれるチームメンバーを見て、涼子はあらためて思った。

-私の正義感でチームメンバーを、総務部のように恐怖に晒すなんて…、忙しさで殺伐とした空気にさせるなんて、私にはできない。

デスクの下でギュっと手を握り締めていると、後藤さんが自席に戻ってきた。

席に着くやいなや、バタバタと誰かに話しかけられている様子が目に入り、涼子の胸が痛んだ。

自分のチームを守る為に、他の部署が大変な事態になっているのに見て見ぬふりをすることは、はたして正しいのだろうか…

涼子は考え続けたが、答えは出ない。

その日の20時、仕事に集中できなくなりコーヒーを買って戻ると、人事部は涼子以外みんな帰っていたが、総務部はまだ残って業務に当たっている。もちろん後藤さんの姿もあり、PCに向かっている。

事情を知っているだけに、総務部と同じ空間に居続けるのが辛くなり、涼子はメールを1本打ち会社を後にした。

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