2018.01.29
“ゆとり”のトリセツ Vol.1沈みゆく船
瑞希の上司、吉田はもうすぐ50代だろうか。
総合商社に10年ほど勤めた後、コンサル業界に転職し、競合他社から瑞希の勤める会社に移ってきた。
広い業界の人脈が買われ、今年か来年にはパートナー昇格もあり得るかと噂されている。
上司の話相手はほとんど先輩に任せ、瑞希はペロリとステーキを平らげた。
下げられる皿を名残惜しく見送ったが、気持ちを切り替えデザートのメニューを手に取る。
「そういえばこの前辞めた笠原、上野の大学の後輩だったよな?今何やってるの?」
「詳しくは知りませんけど...知り合いのベンチャー数社で色々やってるみたいですよ」
「なんだ、ふわっとしてんなぁ。俺思うんだけどさ、上野くらいの年の子って、腰据えてひとつのことに打ち込めないやつ多いよなあ。俺が20代んときはさぁ...」
再び始まった昔話に心の中でため息を吐きつつ、デザートメニューに意識を戻した。
―偉そうに言ってくれちゃって...。
“石の上にも3年”なんて、古い。
世界がこれだけ目まぐるしく変化している中で、3年も石の上に座っている方がおかしい。
大体20年以上も前の成功体験が、この現代に生きるんですか?
―でも、関係ないもんね。だってあなたは、残りの人生"安泰”だから。
瑞希たちが10年後成功しているかどうか分かる頃には、上司は悠々リタイア生活で、私たちがどうなっていようと責任ゼロだ。
ちゃんと勉強して一流大学に入って、大企業に就職して。
ちゃんとした人と結婚して、家庭を築いて。
ちゃんと定年まで勤め上げて、退職後の余生は年金でのんびり暮らして。
ちゃんと頑張っていれば幸せが約束されていた時代。
この“ちゃんと”が今の日本で、どれだけ通用するのだろうか。
今までみんなが必死になって目指してきた大企業の多くが、時代の変化について行けず、業績の曲がり角にぶち当たっている。
年金制度の限界は見えているし、平均寿命は100歳にまで伸びると言われている中、教育→仕事→余生という人生プランすら成り立たない。
瑞希は、今までの“当たり前”が静かに、しかし着実に崩壊していくのを肌で感じていた。
食べたい物を食べ、着たいものを着て、地味ーに遊ぶ。とても共感できる。
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