青田買いのスゝメ Vol.5

恋心を利用する狡猾な男の罠。甘い言葉に騙される女と、巧みに操る男

結婚に適した男は、30歳までに刈り取られる。

電車で見かけた素敵な男は大抵、左手に指輪がついている。

会社内を見渡しても、将来有望な男は30歳までに結婚している。

そんな現実に気づいたのが、大手不動産会社勤務の奈々子・28歳。

同世代にはもう、結婚向きの男は残っていない。ならば・・・。

そうして「青田買い」に目覚めた奈々子は、幸せを掴むことができるのか・・・?

先週、先輩社員・中村に誘われ、二人で食事に行くことになった奈々子。それ以来、奈々子にはある変化が訪れていた・・・?


「奈々子ちゃん、お疲れさま。これ、差し入れ」

中村が奈々子の耳元で囁き、チョコレートを置いた。

奈々子は顔を上げ、恥ずかしさを隠しながら中村に会釈すると、二人の間に甘い時間が流れた。

「明日までには資料の作成も終わります。遅くなり申し訳ありません」

周囲に親密さを悟られぬよう、丁寧な敬語を使うことでビジネス上の関係を強調する。

「ありがとうございます」

さっき耳元で“奈々子ちゃん”と呼んだ時とのギャップに、奈々子はくすぐったいような気持ちになった。

二人で食事をして以来、中村と奈々子は急速に距離を縮めていた。

今の奈々子は、中村から頼まれた仕事で目が回るほど忙しい。だがそれでも頑張れるのは、彼のためだろうか・・・?

−違う、違う。私は責任感が強いだけよ。

自分のための言い訳を繰り返す。

「岡田さん、この資料なんですけど・・・」

作業の手をとめてぼおっと中村の後ろ姿を見ていると、新入社員の田中が大量のファイルを持って奈々子のところにやって来た。

「ごめん、後にして」

ピシャリと言うと、しょんぼりと席に戻る田中のことは気にせず中村の背中に目を戻す。

あの夜、中村は奈々子を抱きしめた。その温もりが今の奈々子の原動力といっても過言ではない。

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