2017.11.21
SPECIAL TALK Vol.38類似店乱立での苦境から一大チェーンを築くまで
金丸:開業当初は飛ぶように売れましたが、その後も順調だったんですか?
田中:そんなに甘くはありませんでした。4月にオープンしたのですが、JINSが成功したのをきっかけに、地元のメガネ屋や大手が同様のビジネスモデルを展開するようになり、夏には類似の店が天神地区だけで20軒もできてしまったんです。
金丸:そんなに!?
田中:その影響で、伸びていた売上げが最盛期の半分くらいまで落ち込んでしまい、さらにはビブレの運営会社が倒産してしまって……。
金丸:それは大変でしたね。
田中:一時は撤退しようかと思いましたよ。いまのうちなら大怪我しないで済むと。しかし、似たような店を1軒ずつしらみつぶしに見てみたところ、どこか「へんてこ」なんです。
金丸:というのは?
田中:私はそもそもメガネの価格を下げたい、メガネ屋のイメージを変えたいと思って始めたのですが、どのお店も値段は安いけど、内装や接客がよくなかったりと、どこかちぐはぐな感じで。
金丸:JINSを真似て値段は下げたものの、ほかが追いついていなかったんですね。
田中:それを見て、「これなら勝てる」と改めて思ったんです。本気で勝負しようと覚悟を決めました。
金丸:具体的には何をしようと?
田中:まずはオリジナルの商品をどんどん出していこうと思いましたね。そのためには販売数を確保しなければいけない。けれど店舗数が足りない。そのため、その年の11月には代官山、12月には京都、翌年3月に神戸、4月に前橋と次々に出店しました。いまが勝負だと思ったので、一気にアクセルを踏んで。
金丸:決断の早さとスピード感がすごいです。
田中:当社のオリジナル商品を見てもらえば、必ず他社との違いをわかってもらえると信じていましたから。
金丸:実際にそうなりましたか?
田中:はい。他社との差別化ができて、一気に浮上しました。JINSのメガネは、レンズもフレームも、品質対価格でいえば世界一だと思っています。
金丸:製造はどこでしているんですか?
田中:フレームは一部日本製もありますが、中国が中心です。レンズはHOYAやニコンといった国内の一流メーカーから仕入れています。
金丸:普通のメガネ屋だと、レンズってすごく高いじゃないですか。
田中 数万円はしますよね。その点、当社は大量に仕入れることで、安く提供できるのです。JINSの年間販売本数は520万本なのですが、おそらく業界2位の倍近く差があるのではないかと思います。
金丸:そんなに違うんですね。現在の店舗数はどれくらいですか?
田中:全国のほぼ全県に329店舗あります。海外では中国が100店舗を超えました。あとは台湾に17店舗、アメリカに4店舗ですね。
アメリカでの成功には何が必要なのか
金丸:アメリカはどこに出店しているのですか?
田中:サンフランシスコ、シリコンバレー、それからロサンゼルスです。
金丸:日本とアメリカとでは、売れるメガネも違いますか?
田中:全く違います。やはりアメリカは、ファッションに対する感度が高い。
金丸:そうなんですか!? 日本人のほうがこじゃれたものを好んだり、細かいところまでこだわりそうなイメージですけど。
田中:たとえばフレームの色だと、日本では黒とか、茶色と黄土色が混じったデミ柄が人気ですが、アメリカでは日本ほど売れません。それよりも鮮やかな青とかグリーンとか、透明が人気なのです。
金丸:顔になじむかどうかより、自分を主張できるメガネを選ぶ傾向が強いんですね。
田中:そうですね。サングラスも、日本ではスクエアやウエリントンがずっとスタンダードですが、アメリカではキャットアイという、目尻がキュッと上がったフォルムのものがよく売れます。メガネに限っていえば、日本人はかなり保守的です。
金丸:たしかに、サラリーマンのスーツもみんな似たような色ですよね。おしゃれをリスクだと思っているのかもしれない。日本人って、年間で何本ぐらいメガネを買っているんですか?
田中:平均すると3年に1本です。多くの人は3年間ずっと同じメガネをかけている。ネクタイとメガネの色を合わせるだけで、すごくおしゃれになるのに。
金丸:じゃあ、私もこの対談では、毎回メガネを変えようかな(笑)。
田中:ぜひ(笑)。けれど、ファッション全般についていえば、日本はこの20年くらいで随分変化しましたよね。田舎のおじさんって、昔はすごい格好してたじゃないですか。奇抜な柄やロゴの入ったセーター着て。「どこで買ったの、それ?」みたいな。
金丸:そうそう。ポケットがいっぱい付いている釣り用のジャケットを着てる人も多かった。でも最近は見かけなくなりました。
田中:そんなふうに変わったのは、ユニクロさんの影響だと思います。ユニクロが売れて、田舎のおじさんが普通になった。大きな貢献ですよ。
金丸:じゃあ、メガネはJINSがおしゃれに変えていかないと。
田中:そうですね。以前に比べると、メガネをファッションアイテムとして考える人が増えましたが、アメリカに比べるとまだまだですから。
金丸:そうなると、既存の商品をそのままアメリカに持っていってもダメなんですね。
田中:向こうにはアジアの方々もたくさんいるので、それなりに需要もありますが、それでもアメリカの感性に合った商品を作っていかないと、現地では受け入れられません。
金丸:アメリカでは日本と全く違うイメージで、JINSを展開しているのですか?
田中:というより、アメリカではまだイメージさえ作れていないです。少なくとも日本ブランドを全面に出すと、いわゆる白人層にはウケない。
金丸:アメリカで成功するには、何が必要なんでしょう?
田中:日本ブランドではなく、アメリカのブランドだと思われたときが、ブレイクスルーではないでしょうか。そうなれば都会だけでなく、地方の方々にも受け入れられると思います。
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