忘れられない男 Vol.7

酔ってかけてくる電話に深い意味なんて、ない?忘れられない男からの着信に動揺する女

春香が、24歳のとき。

心から愛していた男が、ある日忽然と姿を消した。

その日から、春香の時計の針は止まったまま。食事会に行っても新しい恋人が出来ても、まとわりつくのはかつて愛した男の記憶。

過去の記憶という呪縛から逃れることのない女は、最後に幸せを掴み取る事ができるのか?

最愛の恋人・祐也が姿を消してから、祐也への未練を吹っ切れずにいた春香。

グイグイ男・慶一郎ホームパーティーへと連れて行かれるが、訪れたマンションの家主は、なんと祐也だった。さらにそこで、祐也のもう一人の元彼女であるモデル風美女・真紀と出会ってしまう。


「またこうして春香ちゃんに会えて嬉しいな」

そう言って微笑む真紀は、春香が惚れ惚れするほど、美しかった。

完璧な見た目と弁護士という肩書きに付け加え、気配りまで出来る三拍子揃った女が、今、目の前に座っている。祐也が彼女に惚れるのも当然だ、と心の底から思ってしまう。

今日、春香は真紀と芝公園の『ル・パン・コティディアン』でブランチをしていた。ホームパーティーの時に借りたジャージを返すため、真紀に連絡を取ったのだ。

「真紀ちゃん、先日は本当にありがとう」

深々と頭を下げ、ジャージを入れた袋に『アトリエうかい』の焼き菓子を添えて差し出してから、意を決して尋ねた。

「あの、話したくなかったらいいんだけど。祐也君とはどうして別れたの?」

爽やかな土曜の朝の話題としては少々重い気もするが、春香はずっと気になっていたことを聞かずにいられなかった。

憂鬱な春香とは対照的に、真紀はとびきりの明るい笑顔を向けて答えた。

「祐也は、私とすぐに結婚したいって言ったの。でも私、弁護士としてもまだ半人前で、仕事のことを考えたら結婚どころじゃなかったから、別れることを選んだのよ」

そして真紀は、別れた後も祐也から友達でいたいと言ってくれたおかげで、今は良い友達なのだと説明した。

春香は目の前が真っ暗になった気がした。プロポーズも十分ショックだが、別れた後の態度が春香の扱いとは雲泥の差だ。

ホームパーティーで、春香を“知り合い”呼ばわりした祐也の態度を思い出し、胸がズキズキと痛む。

結局それ以上傷つくのが怖くて、肝心なことは探り出せなかった。祐也が姿を消した原因は彼女にあるのかという疑問は晴れないまま、春香は真紀に別れを告げた。

【忘れられない男】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo