忘れられない男 Vol.5

追いかけられると逃げたくなるはずが…グイグイ男の「押して引く」作戦に引っかかった女

春香が、24歳のとき。

心から愛していた男が、ある日忽然と姿を消した。

その日から、春香の時計の針は止まったまま。食事会に行っても新しい恋人が出来ても、まとわりつくのはかつて愛した男の記憶。

過去の記憶という呪縛から逃れることのない女は、最後に幸せを掴み取る事ができるのか?

最愛の恋人・祐也が姿を消してから、祐也への未練を吹っ切れずにいた春香。

ある日、街中で祐也に似た後ろ姿の男を見かけるが、全くの別人だった。ところが、たまたま顔を出した飲み会で、その男・慶一郎と再会してしまう。


春香は、東銀座のビストロ『ヌガ』で、恵子や他の大学時代の友達と集まっていた。シャンパンで乾杯をし、女たちはお決まりの近況報告に夢中になる。

早速、先日知り合った慶一郎のことが話題に上り、春香は尋ねた。

「ねえ…恵子って慶一郎くんと同じサークルだったんでしょ?彼ってどんな人?」

春香たちの出身校は女子大だが、恵子はインカレサークルに所属していたため男友達が多い。そういえば祐也と知り合った飲み会に春香を連れて行ったのも、恵子だった。

「もしかして春香ったら、慶一郎のこと気に入った?早くも新たな恋の予感かな!?」

興奮して騒ぎ始める恵子を、春香は慌てて制した。

「いや、むしろちょっと困ってるの!ものすごくグイグイくるのよ」

「グイグイって、例えば?LINEが毎日来るとか?」

春香が頷くと、恵子は呆れて呟く。

「この間までLINEがマメじゃない男はいやだって言って別れたばっかりなのに、ワガママな子ねえ…」

先週の飲み会で知り合った翌日から、慶一郎は毎日欠かさず連絡をしてくるのだ。

やはり人は、追いかけられると逃げたくなるものなのだろうか。朝も夜も必ずやってくる、慶一郎からのLINEの嵐に、春香は戸惑っていた。

「でも春香、気乗りしないのにいちいち返信するの?私だったら既読スルーしちゃうかも」

口を挟んだ女友達を、春香は恨めしい顔で見返した。

「私もそう思って一度スルーしてみたんだけど…そしたらなんと電話がかかってきたのよ。元気?って」

すると恵子がぷっと吹き出した。

「いいじゃない、今時そんな肉食男子、稀に見る存在だよ。彼はメガバンク勤務で優秀だし、いい話だと思うな」

恵子はにやにや笑いながら春香を見つめている。

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