忘れられない男 Vol.6

泥酔男に絡まれた地獄のホームパーティー。謎のモデル風美女に劣等感を抱く平凡な27歳の女

春香が、24歳のとき。

心から愛していた男が、ある日忽然と姿を消した。

その日から、春香の時計の針は止まったまま。食事会に行っても新しい恋人が出来ても、まとわりつくのはかつて愛した男の記憶。

過去の記憶という呪縛から逃れることのない女は、最後に幸せを掴み取る事ができるのか?

最愛の恋人・祐也が姿を消してから、祐也への未練を吹っ切れずにいた春香。

過去と決別するため、新しい恋愛をしようと必死でもがいていた矢先、グイグイ男・慶一郎ホームパーティーへと連れて行かれる。しかし、訪れたマンションの扉をあけた家主は、なんと祐也だった。


これは現実なのだろうか—。

春香はリビングの入り口で静かに立ち尽くしていた。

玄関先で出会った時の祐也の第一声が、さっきからずっと、耳から離れずにいる。

「おぉ、春香じゃん!久しぶり!慶一郎と友達なの?」

まるで、卒業以来街でばったり会った同窓生のような挨拶に、春香は驚いて目が点になった。

—久しぶりって、それだけ!?

部屋の中では、すでに何名かの男女が賑やかに盛り上がっており、祐也はその中心で楽しそうにしている。

3年ぶりの祐也の姿は、ちっとも変わっていない。くしゃっとした無邪気な笑顔もあの日のままだ。でも、ひとつだけ大きな変化がある。

それは、部屋だ。広くはないが洗練された麻布十番のマンションは、あの頃、中野の古いワンルームに住んでいたのと同一人物の部屋とはとても思えなかった。

春香は、輪の中心にいる祐也に向かってやっとの思いで声を絞り出した。

「祐也。3年ぶりだね」

すると、祐也だけでなく、全員が振り返って一斉に春香を見つめる。

「祐也とあの子、知り合い?紹介しろよ」

茶化す男たちをなだめるように、祐也は笑いながら言った。

「大学時代からの知り合いみたいな感じ。なあ、春香?」

しかし目だけは全く笑っておらず、春香に何かを強く訴えているようだ。その圧に押され、つい頷いてしまった。

「え?…うん…」

男たちは納得したのか、またすぐにたわいもない話を再開した。

さすがに、真実を言ってその場の雰囲気をぶち壊す勇気はなかった。

—私、なんでこんなところにいるんだろう。

部屋の隅で、グラス片手にぼんやりしていたら、気がつくと隣には慶一郎が立って、春香の瞳をじっと覗き込んでいる。

「元気ないけど、大丈夫?」

【忘れられない男】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo