結婚に適した男は、30歳までに刈り取られる。
電車で見かけた素敵な男は大抵、左手薬指に指輪がついている。
会社内を見渡しても、将来有望な男は30歳までに結婚している。
そんな現実に気づいたのが、大手不動産会社勤務の奈々子・28歳。
同世代にはもう、結婚向きの男は残っていない。ならば…。
そうして「青田買い」に目覚めた奈々子は、幸せを掴むことができるのか…?
「今週、毎日会社の飲み会だ・・・」
奈々子は、自分の手帳を見ながら大きくため息をついた。
奈々子の会社は、春と秋に人事異動が多い。
この時期は歓迎会や送別会と、会社の飲み会ラッシュとなり、毎晩の予定が勝手に埋まっていくのだ。
−何が楽しくて、毎日会社の人と飲まなきゃいけないんだろう・・・
日程の調整やお店の予約は奈々子の役回りになることが多いのだが、意味不明な要求が多くて毎回頭を悩ませる。
「会社の近くで、うちの会社の人間に会わない店、よろしくな」
「日本酒がうまい店、頼むぞ。あ、でも部長はワインが好きだな」
そして下手な店を選ぼうものなら、上司や舌の肥えたお姉さま方にチクチクと小言を言われる。
「騒々しいわねえ。学生さんのお店かしら?」
「今度もっとうまい焼き鳥連れてってやるから。店選びも経験だしな」
行きたくもない飲み会の幹事を精一杯やったのに、必ず文句を言われる、この理不尽さ。
−ああ、もう!こんなことをしてる場合じゃない。私は次の異動までに、旦那を見つけなきゃいけないのに!
会社の「ある制度」によるリミットが刻々と近づいているこの頃、奈々子は結婚への焦りを募らせていた。
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