寿退社したものの Vol.10

寿退社したものの:夜、夫と娘を置いて向かった先。母となった女が密かに平穏を得る場所

結婚したら、寿退社♡

一昔前まで、それは女性の人生における最初の小さなゴールだった。

家庭に入り、料理の腕を磨き、夫の帰りを待つ。

だが、2017年の東京で「専業主婦」は、本当に憧れるべき存在だろうか?

結婚したら、母親と同じように専業主婦になることに疑いを持っていなかった志穂

だが、自立のため復職し、夫との仲も修復しかけたように見えたが、思わぬライバルもあらわれた。

そんな中、職場の社長からフルタイム勤務で働かないかと持ちかけられるが、家族のためにと断念。家庭も上手くいかず、思わず家を出てしまう。


ただ空を見上げるだけで


しんと冷えた夜の空気は、何故だか心地良かった。

涙を拭いて、適当な靴で外に出る。志穂は、ただただ歩いた。

行き先などない。

頬に当たる風を感じながら、ただひたすら歩くのだ。

時間にして、5分もなかったかもしれない。カッとなっていた志穂は、そのうち憑き物が取れたように落ち着きを取り戻していた。

最寄りのコンビニまでたどり着く頃には、自分の気持ちが随分とスッキリしていることに気がつく。

「私、一体何に対してイライラしたの…。」

義母に対して口走ってしまったこと、康介のLINE…。

だが、ただ独り歩き夜空を見上げただけで、何だか不思議と気分は晴れたのだ。

別に自分は、若い頃のように華やかな夜遊びが必要だったわけじゃない。

こうして一人の時間を、たった10分でも持てただけで色々なことを流せるような気がして、志穂は来た道を駆け足で戻っていった。

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