寿退社したものの Vol.8

寿退社したものの:家庭も仕事も子育ても、すべてを手に入れるなんてただの欲張り?

結婚したら、寿退社♡

一昔前まで、それは女性の人生における最初の小さなゴールだった。

家庭に入り、料理の腕を磨き、夫の帰りを待つ。

だが、2017年の東京で「専業主婦」は、本当に憧れるべき存在だろうか?

結婚したら、母親と同じように専業主婦になることに疑いを持っていなかった志穂

だが、家事・育児をまったく手伝わない夫・康介に不満を募らせていた。

自立のため復職し、夫との仲も修復しかけたように見えたが、思わぬライバルがあらわれる。


新しい自分の居場所


「志穂ちゃん、ランチ行こっか。」

目の前のPCと格闘していた時、社長から肩越しに声をかけられた。

聖羅に紹介してもらったこの職場で、週に3日だけ働く生活に志穂はようやく慣れてきた。

だが、ずっとママ友から「ひなちゃんママ」と呼ばれ、歳の近い男性は夫としか接点がなかった志穂にとって、30歳の若い社長から「志穂ちゃん」と呼ばれることには未だに慣れない。

この職場は平均年齢が20代後半と若く、皆大学のサークルのようなノリで仕事をしている。

互いをあだ名で呼び合い、ハードな業務をこなしながらも友達のようなのだ。

女性陣も既婚で子持ちの志穂に興味津々な様子で、「志穂ちゃん」と人懐っこく話しかけてくれる。

そんな職場に、志穂は「新しい自分の居場所」を見つけたような気がした。

ここでは自分は「ひなちゃんママ」でも「誰かの妻」でもない。皆が自分を、誰かの付属品ではない自分自身を認めてくれているのだ。

それが志穂には、たまらなく嬉しかった。

夫の庇護のもとで、例えようのないほど可愛い自分の娘と暮らしていても満たされない溝が埋まっていくのを感じたのだ。

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