寿退社したものの Vol.5

寿退社したものの:自分の選択を肯定しないと気が済まない、専業主婦の邪魔なプライド

結婚したら、寿退社♡

一昔前まで、それは女性の人生における最初の小さなゴールだった。

家庭に入り、料理の腕を磨き、夫の帰りを待つ。

だが、2017年の東京で「専業主婦」は、本当に憧れるべき存在だろうか?

結婚したら、母親と同じように専業主婦になることに疑いを持っていなかった志穂。だが、家事・育児をまったく手伝わない夫・康介に不満を募らせていた。

自立しようと仕事復帰を試みるも、思うようにいかない日々が続いたが、思わぬチャンスが訪れる。


華やかなベンチャー企業のオフィス


「今日からよろしくお願いします!」

聖羅が紹介してくれたのは、渋谷にオフィスを構えるベンチャー企業の事務職だ。志穂はここで、細々とした雑用や、電話番などを行う。

自分と年はそう変わらない社長に、勢いのある社員たち。華やかな雰囲気とスピード感のある職場に、丸2年間専業主婦だった志穂は興奮を隠せない。

聖羅から連絡を貰った後、志穂はすぐに子連れで面接に行った。

大手での就業経験と、聖羅の紹介だという点が決め手となりその場で採用された。

オフィスからすぐ近くの幼児教室にも奇跡的に空きがあり、そこに預けながら週3日、働く。10時~16時と、時間も完璧だ。

自分は、なんて幸運なのだろう。

騙されそうになったこともあったが、「働きたい、少しでも自立したい」と願えばすぐにこうしてトントン拍子にことが進む。

仕事を探し、希望に燃える志穂には心の余裕も生まれ、ギクシャクしていた康介とも以前のような会話が出来るようになっていた。

保育園ではなく、「幼児教室」に預けるというのも、康介の心証を良くしたらしい。仕事をすることにも、賛成してくれている。

もちろん収入はほとんど幼児教室代に消えてしまうようなものだが、それでも志穂は希望に燃えていたのだった。

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