2017.10.07
令嬢ライフ Vol.1担当さんは、薫の日頃の買い物を把握しておいてもらうことで、サイズや好みに合わせた提案をしてくれる相手。
薫は名だたるブランドに、それぞれの担当さんを持っている。
この担当さんとは、つい半年ほど前にお付き合いが始まったばかり。前任者の転職により、それ以来薫の担当になった女性である。
初めて会った時から友達のような雰囲気で、薫もこの担当さんとのおしゃべりを楽しんでいた。今日のお誘いも、そのおしゃべりの中で是非にと誘われたものだ。
こういったイベントはホテルや星付きレストランでもよく行われている。
普段は店頭に並ばないような貴重なものが揃っていたり、先行販売されている。もちろん、食事やお土産まである。お土産は、そのブランドのロゴが入ったお菓子やシャンパン、非売品のオリジナル商品である場合がほとんどだ。
先ほど薫に声をかけてきた担当さんは、一旦奥に下がったかと思うと、薫の好みに合わせた秋冬の新作を、薫のサイズで数着持ってきた。
ラックに掛けられたそれらは、まだ一般に出まわる前のものばかり。
「あら。これとこれ、かわいいわ」
薫が気に入ったのはジャケットとコート。
「でも私、いつも同じようなものばっかり買ってるって、みんなに叱られちゃうのよね」
ジャケットにもコートにも同じボタンが使われており、雰囲気はほとんど同じ。その2枚を見ながら薫が独り言のように言って、どちらか一つに絞ろうと考えていた時、担当さんが言った。
「ご予算関係ないんですし、どちらも買ってくださいよ」
彼女はまた、満面の笑みを向けてきた。その笑顔に、薫は妙な違和感を覚えて、すぐに返す言葉が見つからなかった。
彼女の崩れない笑顔が原因かもしれないし、違うかもしれない。なぜだか分からないが、薫はしばし固まったように言葉を失った。
「ごめんなさい、もう欲しくなくなっちゃったわ」
自分の中に芽生えた違和感を解消できないまま、どうにかそう言って、薫はそそくさとその場を後にした。
オーケストラが奏でるヴァイオリンが、うるさく薫の耳に響く。
鏡や、床や、柱や、シャンパンの入ったグラスがキラキラと輝いている。
百貨店は、子どもの頃から大好きな場所だ。だが今の薫は、この空間から早く抜け出したくて仕方なかった。
”裕福”なんて言葉には、収まらない女
高沢薫。
大きな瞳が印象的で、彼女と話していると忙しい毎日なんて忘れてしまうような、一種独特の雰囲気を纏う女。
人の目をしっかり見ながら話を聞く様は、彼女の圧倒的な育ちの良さを感じさせる。
しかし時に、28歳とは思えぬ無邪気な笑顔を見せる。その清廉さとあどけなさで、周りの者を翻弄する。
彼女に初めて対峙した者は、誰しもが必ずこう思う。
「彼女は一体何者で、何をしているの?」
聞けば仕事はしておらず、毎日パーティー、展示会、お買い物にレストラン巡り、お友達とのイベント、それに愛犬のお世話で忙しいの♡と平然と言い放つ。
仕事はしていない。家事はお手伝いさんがすべて完璧にしてくれる。
広尾の、緑豊かな景色を眺めながら2SLDKの部屋で暮らす。独身、28歳の薫。
「薫ちゃんの、したいようにしなさい。稼ぐ必要はないんだから、本当にやりたいことが見つかるまで好きな場所で好きなものに囲まれて暮らしなさい」
何度も言われたその言葉の通り、薫は「稼ぐ」なんて概念を持たぬまま、28歳になっていた。
薫は小学校から高校まで、名古屋の名門私立女子校に通った。
父親は経営者、母親は根っからのお嬢様として育てられた専業主婦で、両親ともに名家の出身。お見合い結婚をした両親の長女として、薫は生まれた。
”裕福”なんていう言葉には収まらないほど、豊さを持て余したような家庭で子どもの頃から、それはそれは大切に育てられた。
一流ブランド品を身につけ、有名シェフたちの料理を食べて育ち、大学入学に合わせて上京してからは『ガストロノミー ジョエル・ロブション』へ毎週のように通った。
小学生の時に好きになったブルマリンのお洋服、ヘレナルビンスタインの化粧品は、今も薫の定番品だ。
だが薫が「特別」なのは、その恵まれた環境だけではない。
この記事で紹介したお店
ガストロノミー ジョエル・ロブション
シンプルにお育ちがいい。
私こうゆう女性すきだなー。言葉使い汚い人や毒吐く人、下品な人の方が嫌だな💦
ストイックな受験生活、周りのサポートあってこそだと思います。
てか、どの話も簡単に東大に行きすぎ...
【令嬢ライフ】の記事一覧
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