真の「令嬢」を、あなたはご存知だろうか?
アッパー層の中でも、その上澄みだけが集う世界で生きる薫は、「普通」とはかけ離れた価値観で生きてきた。
高価なジュエリー、日々の美食、時間に追われぬ毎日。
仕事も家事もせず、誰もが羨むような贅沢を当たり前のように享受する。
そんな薫にも悩みはある。
だがそれはやはり、「普通」とはかけ離れたものだった。
ある日の夜、薫はタクシーで、いつも行く百貨店へ向かっていた。
今日は、最近お世話になっているブランドの「担当さん」に誘われたイベントが開かれるのだ。
春夏、秋冬と年に2回、閉店後にフロアを貸し切って、上顧客だけが呼ばれるイベント。
これは、百貨店の上顧客である「一部の人」しか呼ばれないものだ。
今回薫が呼ばれたのは、高級ブランド専門のフロア。
このイベントが行われるのは、通常営業が終わった閉店後。そのため閉店間際の館内は、百貨店にとって特別なゲストたちでにぎわい始める。
ゲストたちは百貨店の入り口で、胸元に招待客の印をつけて入店する。
その客層は年配者と、明らかに特定のブランドに身を包んだ者とに大きく分けられる。前者は外商関係、後者はブランド店員からの招待だ(薫はその両方から招待されている)。
そんなゲストたちが入り混じる中を、まだ年若い薫は堂々と闊歩する。
薫のような外商関係のゲストはフロア全体をうろうろしていることが多い。逆にブランド関係のみのゲストは目当てのブランドのコレクションラインを物色していることが多く、ひどく高価で奇抜な商品から売れて行くのを、薫はよく目にしていた。
フロアの至る所ではクラシックの生演奏が入り、それがBGMとなり心地良い空間を作っている。
アペリティフやシャンパンが、どのゲストにもサーブされるため、薫も1杯口をつけていると、突然声を掛けられた。
「あらー、ありがとうございます。来てくれたのね」
くるりと振り返ると、そこには「担当さん」が満面の笑みで立っていた。
この記事へのコメント
シンプルにお育ちがいい。
私こうゆう女性すきだなー。言葉使い汚い人や毒吐く人、下品な人の方が嫌だな💦
ストイックな受験生活、周りのサポートあってこそだと思います。
てか、どの話も簡単に東大に行きすぎ...