メニューによります2 Vol.1

メニューによります2:牙を剥いた独身貴族。都心を離れた話題フレンチへの逃避行

男性から食事に誘われたら、必ずこう答える女がいる。

「メニューによります」

男をレストラン偏差値で査定する、高飛車美女ひな子が、中途半端なレストランに赴くことは決してない。

彼女に選ばれし男たちは、高飛車に肥えた彼女の舌を唸らせるべく、東京中の美食をめぐり、試行錯誤を繰り返す。

これまで多くのレストランで様々なドラマを見せてくれたひな子だが、美食を巡る冒険は、まだまだ続くようだ。


-この私も、もう28歳なのね...。

鏡の中の自分をじっと覗きこみ、ひな子はその肌を念入りに観察してみる。

年齢による衰えは、今のところ感じない。むしろ数年前より頬の肉が削ぎ落とされ、フェイスラインは綺麗に引き締まった。

肌の白さと透明感はキープできているし、艶感は以前より増した気がする。

やはり年齢を重ねることには多少の抵抗を感じるものの、こうして年相応の色気を帯び始めた自分を、ひな子は意外に気に入っていた。

それに、今でも周囲は数多の男たちで溢れかえっている。

己の美しさにうっとりしながら、sisleyの高級美容液を丁寧に肌に伸ばす。すると、スマホが鳴った。

-姫、たまには都心の喧騒を離れて、下町の情緒を味わいに行きませんか。

イケメン社長・久保である。彼とは何だかんだと数年越しの付き合いになるが、相変わらず粋な誘い方をしてくれる。

-お付き合いしますわ、殿。私もちょうど、都会の刺激には飽きていたの。

久保に調子を合わせ、上機嫌で返信を打つ。

メニューを聞かずとも、ひな子には彼が提案するだろう店を十中八九当てる自信があった。

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